SCORE CARDBACK NUMBER
「少しでも長く現役を続けるため」前田健太(34歳)がトミー・ジョン手術からの現在を前向きに語った理由…1年間で体重8キロ増量
posted2022/10/18 17:00
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
投手生命を左右しかねない大手術を受けても、ツインズ前田健太は、これまでと変わることなく、朗らかで前向きだった。9月中旬、キャンプ施設のあるフロリダ州フォートマイヤーズでの練習を終えた前田は、さっぱりとした表情で今後の見通しを口にした。昨年来「表舞台からは消えていたので……」と苦笑しつつ、2度目となったこの日のフリー打撃登板について、「スピードは99マイル(時速約159km)くらいかな……」と、実際は90マイル(約145km)ながら、いつも通りのジョークで笑わせた。
昨年9月、右肘の「トミー・ジョン手術」を受け、長いリハビリが始まった。これまで同手術は復帰まで12~15カ月を要するとされてきたが、前田が受けたのは日本人では初の「インターナル・ブレース(人工靱帯)」を使った最新の手術で、リハビリ期間が短縮されると理解されていた。実際、キャンプ前にキャッチボールを再開し、6月にはブルペン入り。その後、打者相手の投球に移行するなど、順調なペースで回復してきた。その一方で、9月以降、ツインズが失速したこともあり、今季中は無理をせず、来春の開幕に照準を合わせるプランが固まった。
「1年間野球から離れていたし、軽く投げることが長いこと続いていたので、試合で投げる感覚や全力を出すというのをちょっとずつ取り戻して行きたいと思います」
今後の野球人生を左右する1年
長く、苦しいはずの期間を、前田は肉体改造に取り組む絶好の機会と捉えてきた。同手術の経験者でもあるパドレスのダルビッシュ有にも相談し、ウェートトレや食事管理など計画的な体力強化に着手。約1年間で8kg増の体重90kgと、34歳にしてパワーアップに成功した。
「ずっと増やしたいと思っていたんですけど、シーズン中はなかなか増やせなかった。成果は出たので、ここからは野球にどう変えて行くかというのが大事。ベストのところを探しながらやっていきたいです」
来季は8年契約の最終年でもあり、今後の野球人生を左右する1年となる。手術を決断したのは、「より強くなって、少しでも長く現役を続けるため」。現在、日米通算156勝の右腕は、目標とする200勝へ向けて「初心に戻る」のひと言に、完全復活への決意を滲ませた。