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イチローのマリナーズ若手たちから“慕われる”日々…21歳の“弟分”は連日キャッチボールをお願い「良い意味で想定外でした」
posted2022/10/11 17:00
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
「最もプレーオフから遠ざかるチームになるなんて想像すらできませんでした」
イチローさんが笑顔でこう話したのはマリナーズがポストシーズン進出を決めた際のことだった。
プレーオフから遠ざかること21年。MLB、NFL、NBA 、NHLの北米4大プロスポーツで最も長く続いた負の歴史はついに断たれ、勢いづいたマリナーズはワイルドカードシリーズでブルージェイズを2連勝で撃破した。敵地のフィールドで、肩を組み、輪を作り、歓喜のダンスに酔いしれるナインの姿は、実に誇らしげだった。
イチローさんは今季も会長付特別補佐兼インストラクターとして、選手のアシストに徹してきた。遠征に同行することはなかったが、本拠地のナイターの試合では早出練習が始まる午後1時30分には自らのトレーニングを済ませフィールドに出た。
若手、ベテランに関係なく、練習のサポート役にまわり、じっと選手を見守る。決して、“ああしろ、こうしろ”とは言わない。選手からアドバイスを求められ初めて自身が感じていることを伝えてきた。
イチローに連日キャッチボールをお願いした“弟分”
そのイチローさんは、今季のマリナーズの長所として、まず投手陣を挙げた。チーム防御率3.59は勝ち星と同じくリーグ5番目の数字と安定した。そして、もうひとつ。野球とは直接的には関係のない部分だった。
「いろんなチームの話を聞きますが、どこも問題を抱えている印象です。今年のマリナーズはバランスのとれたチームです。僕はホームゲームにしかいませんが、ケージにいると特に野手に関してはいろんなことが見えてくる。全体としては(メンタル面の)ムラが少ないし、確かに選手は真面目です」
精神的にムラがなく真面目な集団、それが今のマリナーズ。その中でイチローさんをしても想定外だったのがフリオ・ロドリゲスの躍進だった。打率.284、28本塁打、25盗塁。新人としてデビュー年での「25本塁打+25盗塁」はメジャー史上初の快挙となったが、イチローさんが評価するのは数字的なことだけではない。