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コスタリカで愛されたヤングなでしこ「ハマノは一番のお気に入り」代表広報が感じた“W杯準V以上の価値”とは?〈なでしこ初招集で涙も〉
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byJFA/AFLO
posted2022/10/12 17:00
10月6日のナイジェリア戦でなでしこジャパンデビューを飾った浜野まいか。U-20女子W杯でMVPに輝いた18歳は、試合後のインタビューで悔し涙を流した
そうして迎えた準々決勝・フランス戦は、リードされる展開となったが、延長後半アディショナルタイムで同点に追いつきPK戦へ。選手、スタッフ、そしてスタジアムからエールを送る日本人サポーターと現地ファンが祈るように見つめていたPK戦は、GK大場朱羽(20歳)が1本目をストップすると、日本は5人全員が成功。勝利をもぎ取ってみせた。
5人目のDF田畑晴菜(20歳)がゴール左下に突き刺した瞬間、選手たちは一目散に駆け出した。その隣でキャプテン長江は膝から崩れ落ちた。試合後、ピッチ上で組んだ円陣でも長江は涙に暮れたほどだ。そんなキャプテンを、今度は周囲の選手たちが支えた。
「これでまたみんなで2試合戦えるから頑張ろう」
長江は仲間に勇気づけられるとともに、チーム全体の成長を実感した。
「あそこで勝ち切れたのが4年前のU-17との違い。すごいチームだと思った」
フランス戦勝利の勢いそのまま、準決勝では難敵ブラジルを撃破。最後はスペインに1対3で屈したが、チームは最後まで自分たちの戦いを貫いた。
これで約1年3カ月にわたる活動が終了。表彰式では皆が目を腫らしていたが、それでもスタンドへの挨拶を忘れることはなく、ピッチ外の振る舞いも揺らぐことはなかった。そんな彼女たちに、最後まで割れんばかりの拍手と「ハポンコール」が鳴り響いていた。
「プラビーダ」を覚えた金の卵たち
彼女たちにとって、コスタリカでの1カ月はどんな時間だったのだろうか。
この期間、彼女たちは現地の人々が使う「プラビーダ(Pura Vida)」という言葉をよく口にしていた。英語にすると「ピュアライフ(Pure Life)」だが、日本語にするとなかなか適当な訳が見つからない。朝の挨拶から別れの時、感謝の気持ちを伝えるときにも使われるのがこのフレーズだという。ピュアに生きることを信条とするコスタリカの人々から後押しを受けながら経験した成功体験は、きっと今後の糧になる。
先日、大会MVPに輝いた浜野は2023年女子W杯に向けた強化を進めるなでしこジャパンに初選出された。代表デビューを果たしたナイジェリア戦後のインタビューでは、嬉しさの反面、思うようなプレーができなかった悔しさが入り混じり、涙声でこう答えた。
「FWとしてゴールに向かうプレー、シュートも打ちたかった」
18歳のピュアな想いは、再び世界一を目指す新生なでしこジャパンの力になるだろう。彼女たちの新しい冒険は始まったばかりだ。
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