予期せぬ“コスタリカの後押し”をもらって決勝戦まで駒を進めたヤングなでしこだったが、決して笑顔だけで戦い抜いたチームではない。パンデミックの影響によりチーム発足以降に実施できた海外遠征はゼロ。国際試合ができたのは大会直前に戦った韓国、カナダとの練習試合のみだった。

　キャプテンDF長江伊吹（20歳）は「リベリアでの直前トレーニングキャンプでもディフェンスラインのコントロールは上手くいっていなかった」と率直に明かした。それでも「一つひとつの共有ごとをみんなで話し合って、グループリーグ初戦のオランダ戦もパーフェクトではなかったですが、試合を重ねるごとに合わせられてきました」と、大会を通してその手応えを確かなものにしていった。

　池田太監督が「このチームの選手の理解力、適応力には目を見張るものがある」と言うように、際どい試合を一つずつものにしていった。

キャプテンが伝えた4年前の悔い

　選手たちの決意が一層固く結ばれたきっかけがあった。準々決勝・フランス戦を前にした選手ミーティングである。

　一発勝負となるノックアウトステージは、敗れることはすなわち即帰国、チームの解散を意味する。これまで選手のみでのミーティングを持った機会がなかったことから、池田監督がキャプテン長江に提案し、試合の前々日夜に行われた。

　長江いわく、「一人ひとりが自分の今の本音をぶつけ合った」ミーティングでは、出場機会が限られる境遇の苦しさを吐露する選手もいたという。しかし全員が携える思いを互いに知ったことで、それぞれが自身の立場でやるべきことをより明確に意識する機会となった。

チームを牽引したキャプテンDF長江伊吹　©︎FIFA/Getty Images

「自分にとって初めてのW杯だったウルグアイ（FIFA U-17女子W杯ウルグアイ2018）の時に、準々決勝でPK負けをした時のことを話して。あの時の悔しい思いはキャプテンとしてみんなにはさせない、と」

　長江は4年前にした“経験”をしっかりとチームメイトに伝えて気持ちを一つに束ねた。

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