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「兄が医者なら、俺は弁護士」名門・明治大サッカー部主将が目指す“弁護士Jリーガー”「プロ生活は今以上に自由な時間が増える」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2022/09/30 06:00
来季から横浜FCに加入する明治大DF林幸多郎(4年)。Jリーガーになるという目標を達成した大学生には、叶えたいもう1つの夢がある
晴れてJリーガーとなる林だが、ここからプロアスリートとして厳しい競争に身を置く。弁護士を目指すためのハードな勉強時間を確保できるのか。
「いや、Jリーガーになったら、今以上に自由な時間が増えると思っています。もちろん試合に出るための練習や体づくり、ケア、休息など、プロアスリートとして高い意識を持って取り組むことは多いですが、メリハリをつければ勉強に打ち込める時間も多いと思うんです」
Jリーガーの時間割を簡単に説明すると、試合のない平日は午前中または午後の練習を終えたら基本的に自由時間となる。試合当日も、ベンチ入りメンバー以外は午前中に練習をこなし、そこから試合を観戦するのみ。
実際に高卒選手が大学の通信課程に進む例は多く、そのほかにもアスリートフードマイスターなどの体づくりに役立つ資格を取得する選手や、将来の海外移籍を見据えて言語習得に励むなど、大成する選手はそれぞれ時間を有効活用しているケースが目立つ。サッカー以外の時間をどう過ごすかは、プロとしてのキャリアを歩む上でとても重要な選択になる。林にとってのそれが司法試験の勉強にあたるのだという。
現役時代からセカンドキャリアを形成する
「先日まで『オールドルーキー』というドラマが放映されていたり、アスリートのセカンドキャリアに注目が集まっていますが、そのためには引退後ではなく、現役中から動いておくべきだと思うんです。Jリーガーと弁護士を目指す道の両立は難しいかもしれませんが、新しいJリーガー像というか、生き方を示すことができるし、サッカー選手の価値を上げていけるんじゃないかと。自分がモデルケースになって、サッカー界に貢献していきたいとも思っています」
もちろん、プロである以上、結果が全てだ。調子を落とせば否定的な声が耳に入ることもあるかもしれない。それでも、24時間、365日をデザインしながら生きてきた林には勝算がある。
「こうして取材に答えている以上、いい意味でも、悪い意味でも注目されるかもしれない。今回のインタビューをきっかけにどちらかを諦めるという選択肢はなくなったと思っています。自分へのプレッシャーというか、どちらも中途半端には終わらせないぞという覚悟、決意表明でもあるんです」