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「名前付きでお尻のアップの写真を上げられて…」女子陸上選手の“性的画像”告発にJOCも動いた「私たちも大会で何度も悔しい思いをしてきた」
text by
鎌田理沙(共同通信)Risa Kamata
photograph byGetty Images
posted2022/09/25 11:03
女子陸上選手たちの告発に日本陸連、JOCが動き出すことになった。その起点となった選手たちの思いとは
しかしこれらのつぶやきは、現在の法整備だと検挙することができないという壁にぶつかっている。B、C選手の2人とこれまで選手が受けてきたネット上での被害を精査して意見書を作ったあと、知り合いをたどって警視庁へ相談にも行っているが、警察当局は「これは事件化できない」との一点張りだったという説明だった。
現時点で記事にするのは待ってほしい
捜査が介入するのが難しいのであれば、やはり競技団体が対応を強化するしかない。日本陸連に被害の実態、法整備で追いつかない現場の規制、今後の対応策を工藤弁護士から持ちかけているという。
そして、日本陸連が、国内競技団体の統括団体である日本オリンピック委員会(JOC)に相談をする予定があるとの示唆があった。A、B、C選手の被害の訴えを受けて、日本陸連のアスリート委員会、日本陸連、そしてJOCが何らかの動きを見せる可能性があるということだ。
「現時点で記事にするのは待ってほしい」と工藤弁護士からのお願いがあったが、これからは取材する側としても組織の意向を注意深くチェックし、記事化のタイミングをうかがう必要がある。今度は10月7日、日本陸連がJOCに今後の動きについて相談したあと、日本陸連に直接取材をすることになった。
会場でもそれらしい人を捕まえることはあっても…
10月7日、東京都新宿区の国立競技場のすぐ近く、ジャパン・スポーツ・オリンピック・スクエア(JSOS)の9階に日本陸連事務局はある。JOCに問題対策の協力を相談した日本陸連に再度取材を行うということで、共同通信からは益吉、品川、鎌田、東京本社運動部の田村崇仁デスクの4人が現地に赴いた。
田村デスクは1996年に入社し、サッカーやプロ野球、JOCキャップを経て2013年からはロンドン支局に駐在して国際オリンピック委員会(IOC)や国際パラリンピック委員会(IPC)、欧州スポーツ全般を取材。13年に柔道女子の暴力・パワーハラスメント問題の取材班代表として、新聞協会賞を受賞している。今回も記者が話を持ちかけた当初から「もしかしたら大きく広がるかもしれない。取材してみよう」と、社会へ問題提起するニュースへの嗅覚は敏感だった。
日本陸連からは風間明事務局長や平野了強化部強化育成課長(すべて取材当時の肩書き)、そして工藤弁護士ら5人が出席した。
それぞれ簡単な自己紹介を終え、風間事務局長が会合の口火を切った。