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「名前付きでお尻のアップの写真を上げられて…」女子陸上選手の“性的画像”告発にJOCも動いた「私たちも大会で何度も悔しい思いをしてきた」
text by
鎌田理沙(共同通信)Risa Kamata
photograph byGetty Images
posted2022/09/25 11:03
女子陸上選手たちの告発に日本陸連、JOCが動き出すことになった。その起点となった選手たちの思いとは
性的画像被害に以前から心を痛めていた弁護士
次はB、C選手に名前を教えてもらった日本陸連法制委員会の工藤洋治弁護士の事務所に連絡をして、アポを取らせてもらった。
工藤弁護士は会社法などを専門とする傍ら、東京大学の陸上運動部で競技をしていた経験から日本学連に関わっている。東大では100メートル(手動)、200メートル、400メートルで学内記録を樹立するなど、名実ともに文武両道の競技者だった。
9月17日、会社の運動部で陸上取材キャップをしている益吉数正記者、品川、鎌田の3人で、工藤弁護士の事務所に伺い、現時点での進捗を聞いた。
益吉記者は05年入社で、初任地は千葉支局。社会部系の取材を担う一般記者として福岡支社で県警キャップを務めたあと、13年に運動部へ異動した。プロ野球の遊軍を経て、陸上やJOC、冬季ではスキー競技などを担当している。
アスリートが会場で性的な写真を撮られていることについて、工藤弁護士は以前から心を痛めていたという。被害が多発した日本学連は10年以上前から、事態を深刻に捉えていた。だからこそ長年苦しんできた問題について声を上げた2人の女性選手に対し、工藤弁護士は協力を惜しまないつもりだった。
警察当局は「これは事件化できない」
事務所の大部屋の椅子に全員が腰かけると、工藤弁護士は1枚の紙を机の上に置いた。陸上短距離種目の女性選手がスターティングブロックを使ってスタートする際にお尻を突き上げている写真を拡大編集して、卑猥な言葉とともにツイッターで投稿したツイートをスクリーンショットした画像だった。
ネットの世界ではスラングなどの罵詈雑言が横行し、性的な言葉もよく見かけるが、現実世界でこんなひどいことを、公衆の面前で言い放つ人はそれほど多くはないのではないか。工藤弁護士から差し出された紙には個人の性的な欲求を表す文言が踊っていて、ひどく滑稽にすら見えた。