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馴れ初めはシドニー五輪…40歳フェデラーが“最強の愛妻家”になるまで「僕の妻です。うん、響きがいいね(笑)」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2022/09/23 06:04
41歳で引退を迎えるフェデラー。妻は元テニス選手のミロスラバ“ミルカ“・バブリネック
「人生をかけていたものを突然失い、深い穴に落ちてしまったようだった。何もすることがなく、テレビでテニスを見ながらいろんな思いを巡らしたわ。そのとき私を支えてくれたのはロジャーだった。彼が勝てば自分が勝ったようにうれしかった。ロジャーが私にもう一度テニスを取り戻させてくれた」
新たな自分の夢をかけ、恋人のサポート役に徹しようとした決意の強さは、フェデラーが残してきた足跡に表れている。
「ミルカを妻と呼べることがただうれしいんだ」
2009年4月にふたりは結婚式を挙げた。フェデラーは結婚後初めて出場したモンテカルロ・マスターズの記者会見でこう語った。
「僕たちはこれまですごく長い時間いっしょにいるから、結婚したからといって何かが大きく変わるわけじゃない。でも、ミルカを妻と呼べることがただうれしいんだ。恋人じゃなくて妻とね。それは僕にとって想像以上に大きな変化で、慣れるまでにちょっと時間がかかりそうだけど、ここであなたたちにも紹介するよ。僕の妻です。うん、響きがいいね(笑)。最高の気分だ」
その1カ月後、ついに全仏オープンを制して生涯グランドスラムを達成。ウィンブルドンでは2年ぶり6度目の栄冠に輝き、ピート・サンプラスを抜いて当時の史上最多記録となる15回目のグランドスラム優勝を遂げた。その約2週間後に女の子の双子が誕生する。
家族席にはいつも「家族」の姿が
次々とドラマを展開するフェデラーとミルカは、さらに大きなチャレンジを試みる。出産からわずか3週間で、ミルカは赤ん坊たちを連れてツアーに同行したのだ。家族皆で過ごすことは、ミルカの一番の望みであり、フェデラーの願いでもあった。以来、そのスタイルをずっと通している。