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「死んでもいい覚悟なんていらねぇんだよ!」葛西純はエル・デスペラードに何を伝えたのか? カメラマンが激写した“血と熱狂の23分30秒”
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2022/09/15 17:01
エル・デスペラードのマスクと顔面を切り裂く葛西純。激しすぎる両者の闘いに、国立代々木競技場・第二体育館は興奮のるつぼと化した
決死の覚悟と同じくらいの強度で、デスペラードは楽しんでもいた。葛西コールを楽しむ彼の顔は、すぐに嬉しそうな表情に変化した。葛西が白いコスチュームで姿を現したからだ。自分が追いかける存在と、互いにとっての「特別な試合」という位置づけで戦うことができる。自分が追う側だったら、と想像してみてほしい。これで死んでもいい、と思うのも不思議ではないのではないだろうか。
血塗れの素顔があらわに…熱狂の23分30秒
2人の笑顔は同時に切り替わった。葛西がリングインの前に上着を脱いで臨戦態勢になると、デスペラードも同じタイミングでシャツを脱ぎ戦いの表情に。握手ではなく中指を立て合い、ゴングが鳴らされた。もちろん、今回はノーDQマッチだ。
序盤こそ腕の取り合いやグラウンドの攻防が行われたが、デスペラードからパイプ椅子での打ち合いを誘うと、試合は一気にハードコアモードに。主導権を握ったのは、有刺鉄線ボードへのハンマースルー合戦を制した葛西だった。
葛西は倒れたデスペラードの背中に有刺鉄線ボードを乗せてパイプ椅子で滅多打ちにすると、有刺鉄線とノコギリでマスクを切り裂きながら流血させる。開始から10分も経たずに、デスペラードは血塗れの素顔で戦うことになった。
反撃に転じようとするデスペラードだったが、“デスマッチのカリスマ”はそれを簡単には許さない。ギターを持ち出されればそれを逆に脳天に叩きつけ、勢いづきそうになればパイプ椅子を投げつけて止めてみせた。葛西は、リバースタイガードライバー、アルミ缶ボードへのパワーボム、さらにパールハーバースプラッシュと一気に畳み掛ける。
なんとかキックアウトしたデスペラードは、カミソリボードへの河津落とし、場外テーブルへのダイビングボディプレス、と自らも大ダメージを負う攻撃で意地を爆発させて流れを引き寄せるが、葛西は竹串攻撃でまたもペースを引き戻し、垂直落下式ブレーンバスター、フォークボードへの雪崩式リバースタイガーデストロイヤーと大技で決めにかかった。
それでも、デスペラードはカウント3を許さない。場内は足踏みと大デスペコールに包まれたが、葛西はそれも自らへの声援に変えてみせた。フォークを自らの額に突き刺して満足そうに笑う“狂猿”に対し、会場は放送禁止用語の大合唱に。葛西はカミソリボードをデスペラードに乗せ、再び「シェー」からパールハーバースプラッシュを投下した。