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女子アスリート特集の裏で「なんか嫌だねって」“野球界のアイドル”と呼ばれた片岡安祐美(35歳)の本音「プレーを見てほしかった」
text by
小泉なつみNatsumi Koizumi
photograph byAsami Enomoto
posted2022/09/17 11:03
「野球界のアイドル」と呼ばれ人気を博した片岡安祐美さん。その裏で、本人には様々な思いがあったという
“美女アスリート企画”の裏で…「なんか嫌だね」
――「女性初」といった取り上げ方や、容姿のことを書き連ねられたこともあるかと思います。率直にどう思いましたか。
片岡 みんなで練習していても自分にだけカメラが向けられることに違和感しかなかったですし、特に容姿のことは本当に嫌でした。私はプレーを見てほしかったんです。
私は「野球界のアイドル」で、同い年の浅尾美和ちゃんの煽り文句は「ビーチの妖精」。小椋久美子さんと潮田玲子さんは「美人すぎるバドミントンペア」。みんなテレビの女子アスリート企画でよく一緒になりましたが、「なんか嫌だね」って話すこともありました。
――もてはやされたり、女を理由に排除されたり……とかく「特別」扱いですよね。
片岡 私自身は、グラウンドに立ったら誰もがいち野球選手であって、男も女も関係ないと思ってやってきました。だから、生理で調子が悪くても言えない自分もいたし、どんなにキツいトレーニングメニューでも「女だからといって特別扱いしないでほしい」とお願いしていたんです。
相手投手になめられ…ファミレスで号泣
――野球においては、女性であることを排除してきたといいますか。
片岡 1人の野球選手として認めてもらうにはみんなと同じことをやらなきゃいけない。同じことをやれば認めてもらえるはずだという思いが自分の中にずっとありました。それでも、私がバッターボックスに立つと極端な前進守備を敷いてきたり、ピッチャーがなめたゆるいボールを投げてきたり。
――それはムカつきますね。
片岡 ゴールデンゴールズの公式戦で、相手ピッチャーになめた態度をとられた上に結果も残せなかったことがあってふてくされていたら、当時のチームメイトで元中日の酒井忠晴さんに言われたんです。「どんなボールでも野球人なら打って結果を見せればいいだけ。結局、お前自身が一番、女であることにひっかかってるんじゃない?」と。全部そのとおりだと思って、ファミレスで号泣しました。
それから監督になって2、3年目くらいにようやく、女性である自分を楽しめるようになった気がしますね。
うちのチームには女が一人いて、しかもそれが監督です。でもこれは他のチームにはないことで、だからこそ生まれる戦い方が絶対にあるはずだし、それこそが強みだよね、と思えるようになりました。