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「現役の時間は今しかない、戻りたくても戻れないよ」潮田玲子がJリーガーの夫・増嶋竜也と引退について話したこと「草サッカーでも満足するまでやればいい」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto

posted2022/08/29 06:02

「現役の時間は今しかない、戻りたくても戻れないよ」潮田玲子がJリーガーの夫・増嶋竜也と引退について話したこと「草サッカーでも満足するまでやればいい」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

引退した2012年にJリーガー増嶋竜也と結婚した潮田玲子。“アスリートの妻”として夫の引退について語りかけたのは…

女子アスリートをサポートする一般社団法人を設立

 懸命に今ある環境、目の前のことに取り組んできて、新たな目標を見出すこともできた。それを形として表したのが、昨年設立した一般社団法人「Woman's ways」だ。

 潮田が代表を務め、北京、ロンドン五輪に出場した飛込の中川真依、元プロテニスプレイヤーの杉山愛、ロンドン五輪に出場したバレーボールの狩野舞子がメンバーに名を連ねる。女子アスリートが安心して競技を続けられるよう、正しい知識や経験を発信してサポートしていくことを趣旨としている。これまで女子サッカーチームや大学、親子を対象とした講義などを実施、5月には市立船橋高校の体育科男女80名を対象に講義を行った。

「10年かかりましたけれど、学んだことをお返ししたい、社会貢献したいという気持ちが生まれるようになりました。家庭、子育て、仕事でいっぱいいっぱいで突き進んで、子どもたちが少し大きくなってきて余裕も出てきたというタイミングもあると思います」

「気持ちが分かりすぎる」アスリート同士の夫婦

 潮田にとっての引退後の10年は、2012年に結婚したサッカー選手、増嶋竜也と一緒に歩んだ10年でもある。アスリート同士の夫婦ゆえの独特な距離感をこう語る。

「アスリート同士の結婚なので、気持ちが分かりすぎる部分もありました。いいときはいいのですが、チームが勝てないとき、出場できないとき、よくないときに苦しんでいる姿を横で見ていて、なんて声をかけたらいいんだろうと考えることはありました。自分が現役のとき、『そんなに気を遣われても』と思うときもありましたし、腫れ物に触るみたいなのも違うし、あえてフラットにと心掛けていたけれど『話しづらいなあ』というときは正直ありました。ただ、夫も私がアスリートとして頑張ってきたのを認めてくれています。例えば、頑張れ、というひとことが癇に障ること、あるじゃないですか。でも私が言う『頑張れ』は、アスリートがどれだけプレッシャーがあって大変なのかを経験しているからこそ、すっと落ちるというのはあると思うんですね。そういう部分では同じアスリートとして想いを共有できるというのは大きかったかもしれません」

今思えば、もう1、2年競技を頑張ればよかったな(笑)って

 増嶋は2020年12月に引退を発表した。先に競技生活に終止符を打った潮田はどのような思いを抱いていたのか。

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小椋久美子

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