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母校の後輩たちも驚く“地元のスター・茜ちゃん”の世界選手権2連覇…バドミントン山口茜の恩師が語る強さの秘密「朝練も居残り練習もしなかった」
posted2022/08/30 11:01
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Getty Images
強烈なスマッシュを決めたかと思えば、ダイビングレシーブで相手のショットを何度も拾い続ける。156cmの小さな体はコートで躍動し続け、ポイントを重ねるたびに割れんばかりの拍手が沸き上がった。その心強い応援を背に受け、彼女はコートで輝いていた。
バドミントンの世界選手権・女子シングルス。世界ランキング1位の山口茜(25歳)は同4位の中国、チェン・ユーフェイとの決勝戦で68分間の激闘を制し、同種目では日本人初の連覇を果たした。
「試合前からすごく顔つきが生き生きとしていたんですよ。それが充実したパフォーマンスにも繋がっていたと思います。エネルギッシュで、全身に力がみなぎっているような戦いでした」
ちょうど遠征で関東に来ていた山口の母校・勝山高校、女子バドミントン部監督の小林陽年(はるとし)は、教え子らとともに東京体育館の3階スタンドから大一番を見守っていた。
「一瞬、ニヤッとしたんですよ(笑)」
「確かファイナルゲームの最後、21点目を取りに行くときに続いたラリーで、相手が前に滑り込んで茜がクロスヘアピンをひっかけたときに、一瞬、ニヤッとしたんですよ(笑)。その表情を見て、楽しそうにプレーしているなと」
メダル獲得が期待される中でベスト8に終わった東京五輪から1年。恩師の目にも、山口が確実に成長している姿が手に取るように分かった。
「決勝でも2ゲーム目にミスが重なって、流れが悪くなった場面がありましたが、ファイナルゲームではしっかりと立て直して、逆に相手がミスをするまで粘ってラリーをしていました。相手にミスが出たときは攻撃をしかけて連続ポイントでたたみかけていた。茜も疲れているんだけど、相手に疲労の色が見えると攻撃の手を緩めないとか、点の取り方がすごくうまくなったなと感じましたね」
快挙を成し遂げた教え子にどんな言葉をかけたのか。
「いや、いいものを見せてもらったわ、と。もう、うれしいという言葉に尽きます」