オリンピックへの道BACK NUMBER
「見た目をきっかけにアスリートを見るのはおかしい、と言いにくい」オグシオ・潮田玲子が現役時代苦しんだ”美しいアスリート特集”を全否定しない理由
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2022/08/29 06:00
“オグシオ”として多くの注目を集めた現役時代、2008年北京五輪までの道のりは本人にとって「苦しい時期」だったという
「早く終わってほしいような、この苦しみから解放されたいという気持ちと、コンディションが上がってこなくて、『よし、行くぞ』と思うほどの覚悟が決まらないところもあって。アスリートが『楽しみたい』という表現をすることがありますけど、北京を楽しむ感覚がまったくなくて、ぜんぜん楽しめなかったのが悔いとして残っていますね」
準々決勝で地元中国のペアに敗れ、大会を終えた。
「そのときは正直、競技から離れたかったです。おぐっちと一緒に取材も受けるので、その中で大変だし苦しいけど北京まで頑張ろうという感じが合言葉みたいにあったんですね。通過点と考えてなくて、どこかゴールという感覚ではありました。メダルが獲れなかったショックと、準々決勝の内容がよくなかったので、こんなに努力してこんなに思いをかけて毎日練習をしたけれど、かなわない夢ってあるんだなと心を打ち砕かれてしまったんですね。競技そのものを続ける気力がないみたいな感情だったと思います。オリンピックが終わって1カ月くらいは家から出ないくらい、ふさぎ込んでいました」
北京から14年。『お互いに苦しかったね』
北京五輪前から抱えていた心中を小椋と話せたのは、実は今年になってからだった。
「北京から14年ですね。14年ぶりに北京のことを話したんですけど、彼女も同じような思いを持っていて苦しんでいたんだなと感じました。『お互いに苦しかったね』と初めて振り返ることができた。あのときに2人で話し合ったり、苦しみを共有できていたらもうちょっと状況がかわったんじゃないかな、そういうことを思いました」
14年。その数字に、格別の重さがあった。
2人は8月22日に開幕したバドミントンの世界選手権で応援キャスターをともに務めた。
「久しぶりに一緒に過ごす時間が増えました。当時の阿吽の呼吸みたいなのが今もあって、『この感じ、久しぶり』と感じます。2人でやることに意味があると信じています」
<つづく>
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