今年は13戦のうち怪我で2戦欠場、トラブルと転倒で3戦ノーポイントに終わり、チャンピオン争いは厳しい状況だった。だが今季2勝目を挙げ、5回目の表彰台を獲得。その他のレースでもすべて6位以内でフィニッシュして総合4位につけ、首位と55点差は逆転不可能な数字ではない。

　シーズンは残り7戦。ここからはサンマリノ、アラゴンと歩夢が得意とするコースが続く。それを終えると、3年ぶりに日本、タイ、オーストラリア、マレーシアとアジア・オセアニアラウンドが続くことも追い風になるはずだ。

「チャンピオン争いですか？　可能性はありますよね。今回だってトップのガルシアとの差を14点縮められた。僕は欠場や転倒で5レースを失っているけど、1戦ごとの得点のアベレージではトップにいる。追う側だし、プレッシャーもない。リスクを冒していくだけです」

加藤大治郎に通じる強いメンタル

　歩夢のすごいところは、プレッシャーを感じさせない精神的な強さにある。ポケバイ、ミニバイク時代からレースで勝ち続けてきた時代が長く、レースを前にしても緊張はなく平常心で挑める。これは、いまの若手たちにとって目標であり憧れでもある、大ちゃんこと加藤大治郎に通じるところでもあり、チャンピオンシップが接戦になったら、歩夢のメンタルの強さが生きるような気がする。

シーズンの行方を決定づける終盤戦に向け、ますます好調の佐々木。3年ぶり開催の日本GPでの勇姿が楽しみだ

　歩夢が所属する「マックスレーシング」は、レジェンドライダーのマックス・ビアッジが陣頭指揮を取るチームで、「ライダーが戦いやすい環境作り」に重点を置く。そこで戦うことでチーム力の重要性を痛感し、歩夢はMoto2クラスにスイッチする目標を1年先延ばしにすると決めた。

「来年はMoto2に上がりたいと思っていたけど、乗れればなんでもいいというわけじゃなく、勝てるチームで走りたい。Moto3では来年に向けてたくさんのチームからオファーをもらったけど、このチームでもう1年戦おうと思っている。もちろんチャンピオンを目指して、そして勝てるMoto2チームからオファーをもらいたい。次のサンマリノGPはチームのホームGPなので、そこでサインすると思う」

　すでにMoto3で6シーズン目と時間はかかったが、オランダで勝ち、オーストリアですごい勝ち方をした歩夢の才能は見事に証明された。世界中のレースファンが佐々木歩夢に魅了されたに違いない。

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