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「遅いですよね」36歳の苦労人・ロッテ荻野貴司がプロ13年目で到達した“1000本”の重み《あの最強助っ人を抜く新記録》
posted2022/08/15 11:02
text by
千葉ロッテマリーンズ取材班Chiba Lotte Marines
photograph by
KYODO
2022年8月10日、1番・レフトでスタメン出場をした千葉ロッテマリーンズの荻野貴司外野手が、プロ野球史上313人目となる1000本安打を達成した。
節目の一打は、3回2死二塁、福岡ソフトバンクホークス先発・東浜巨の変化球をコンパクトにはじき返す左翼線への適時二塁打だった。
979試合、3994打席目、プロ13年目の36歳9カ月での到達は、レロン・リーの35歳6カ月を抜いて球団最年長の記録。これまで何度も怪我に悩まされた苦労人ならではの“遅い”到達とあって、荻野は少し気恥ずかしそうに記録達成のボードを手にしていた。
小学生に伝えたかった「自分らしく」の意味
自分らしく――苦労人の荻野を思い返すとき、最初に思い浮かべる言葉だ。
2017年1月13日、荻野は子どもたちと触れ合うために千葉市内の小学校を訪問した。校長室に通されると先生たちから大きな紙に「子どもたちに一言、書いていただけませんか?」と要望された。迷うこともなく、小学校の時から胸に刻んでいる言葉を力強く書き込んだ。
「ボクは小学校の頃、背が低くて、クラスの中でも小さい方から数えて3番目ぐらいでした。一番小さかった時もあったかもしれない。その中で、『自分らしく』という言葉を胸に日々を過ごしていました。子どもたちにも『自分らしく』生きて欲しいなと思いますね」
172cmの小柄な体格でプロ野球界で戦う荻野は、その言葉の意味を先生たちに説明した。小さい頃から身体は小さく、中学時代は特にパワー面で力の差を感じて、野球の練習に通わなくなったこともあったほど。
ただ、どんなに壁にぶち当たっても「野球が好き」だという事実が最後に浮かんできた。身体が小さい分、足は誰よりも速かった。だから、それを“自分らしく”磨きあげてきた。