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西谷監督「7回になったぞ」から逆転…大阪桐蔭の初戦は本当に“辛勝”だったのか? 練習風景から見えた“絶対王者のスゴみ”
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2022/08/11 06:01
旭川大戦で二盗を決める大阪桐蔭・海老根。6-3で初戦突破した試合は本当に“辛勝”だったのか?
松尾や川原の心理状況からも窺えるように、大阪桐蔭は「7試合1失点」の大阪大会を一度リセットし、夏の甲子園は苦しい戦いになることを受け入れて初戦に入った。だから、多少の焦りがあろうと動揺はなかった。
星子が言う。
「序盤はうまくいかないこともありましたけど、練習からそんなにガンガン打てたり、みんなの状態がいいわけではないので。そういう時にこそ、『次いこう!』とか前向きな声をかけるようにしています」
この切り替えこそが歴戦の経験であり、このチームの強みでもある。
0-3とされた直後の3回裏。「やるべきことを全うしよう」と、松尾のタイムリーと相手の暴投ですぐさま1点差に詰め寄る。すると6回には、海老根優大のホームランで試合をがっぷり四つの状態に戻した。
西谷監督「7回になったぞ」からの逆転
粘り強く、泥臭く。
それは、今年の大阪桐蔭が試合の度に口にする、言うなれば精神だ。西谷いわく、そのなかでも「試合終盤に粘り強いチームを作っていこう」と、チームに説いているという。
練習からそれは徹底されてきた。シート打撃では、1アウト二塁から得点を演出することを徹底するなど、星子が言った「状態がよくない」なかでも最低限の試合運びができるよう準備をしてきている。
仕切り直しの7回。指揮官が語り掛ける。
「7回になったぞ」
チームのギアがもう一段上がる。「相手が攻めてきているなら、それ以上に攻めていこう」と打席に入った、1番バッターの伊藤櫂人(かいと)のホームランで勝ち越すと、直後に代わった2番手ピッチャーに連打を浴びせ、6-3と試合をひっくり返した。
先にまわしを取られても地面に根を生やしたように踏ん張り、体勢を立て直してまわしを取り返し、最後は寄り切る。大阪桐蔭の初戦は、そんな粘り腰の野球だった。
星子がチームのしぶとさを謳う。
「10-0でも1-0でも、1点多く取ったほうが勝つんで。守備でミスをしても粘り強くできましたし、打てなくても誰かがカバーしてくれたのがこの試合の収穫でした」
王者も苦しんだ初戦の入り。自分たちが掲げる精神で結束し、難局を打開した。
3度目の春夏連覇へ。
大阪桐蔭のエンジンが温まってきた。
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