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波乱の初戦敗退も…なぜ京都国際ナインは“笑顔”だった? センバツ辞退の絶望、勝てない春…“無表情だった”エース森下瑠大が変わった日
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2022/08/07 11:03
初戦敗退の京都国際ナイン。試合中はエース森下を筆頭に、ナインの笑顔が目立った
「『何が何でも甲子園に!』という、彼らの本能が出たんだと思います。自分のことばかりを考える学年でしたが、人間的に成長してくれたと思います」
センバツ出場辞退という絶望の淵から這い上がり、2年連続で夏の甲子園出場を勝ち取った。京都国際は、春の忘れ物を取り戻すチャンスを自分たちの力で手にしたのである。
悲劇の春、そして夏…「本当に嬉しかった」
「春の分まで暴れよう。夏は楽しもう!」
監督の号令で臨んだ初戦。
京都国際はエースが打たれても、試合終盤まで相手ピッチャーを打ち崩せなくとも顔を上げ、白い歯を見せて戦った。
運気がチームに傾く。
4点を追う8回に2点を返すと、土壇場の9回にも2点を挙げ一時は追いついた。センバツ後は劣勢になるとすぐに諦めてしまっていたチームが、最後の夏に暴れた。
「同点としてくれた粘りに成長を感じました」
また「成長」と言い、小牧が目を細める。延長11回の末にサヨナラで敗れても、「今日は完敗です」と敗軍の将は潔かった。
森下をはじめ昨夏のベスト4メンバーの主力も残り前評判が高かっただけに、波乱の幕切れだったのかもしれない。
だが、選手たちにとっては、甲子園で終われたことにこそ意味があった。
忘れ物は、確かに取り戻せた。辻井の真っすぐな言葉が物語る。
「最後に笑って終われたことが本当に嬉しかった。キャプテンをやれてよかったです」
京都国際の夏。悲劇のち、笑顔。