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「なぜ6試合も延期できる?」巨人に問うファンへの謝罪と次にやるべきこと「選手にとってはシーズン中の1試合かもしれないが…」《大規模クラスターを巡って》
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2022/08/05 11:00
後半戦、阪神から初勝利をあげファンに応える巨人・原辰徳監督、桑田真澄コーチ、阿部慎之助コーチたち
つまり練習には戻っているが、試合に出られるコンディションではないので延期せざるを得なかった、ということだ。
実際問題としてヤクルトでも山田は陽性判定が出た7月9日から、実際に試合に復帰した24日まで15日かかっている。そこから判断しても巨人が説明した延期理由は、決して特異なものではなく、延期決定も仕方ないものだったと考えられる。
一連の巨人の対応で引っかかること
ただ……1つだけ、一連の巨人の対応の中で引っかかるのは、ファンに対する“謝罪”が、ひと言もないことだった。
新型コロナウイルスへの感染は、誰が責められるものでもなく、不可抗力の部分が大きいと思う。特に巨人はこれまでも感染予防にはかなり神経を使って取り組んできていた。沖縄キャンプ中には現地医療に負担をかけないために、独自にPCR検査施設を立ち上げ、野球だけではなく他のスポーツの競技者らにも、検査場所を提供してきている。
そういう意味では新型コロナウイルスへの対策、感染予防では意識高い系の球団で、チーム内でクラスターが起こったことも、防ぎようもなかったものかもしれないと想像できる。
だから試合の延期やその理由を問うことはない。
しかし現実としてクラスターが発生し、中日とDeNAの試合が合わせて6試合延期になったことについて、ファンに向けて球団としてメッセージはないのか? 巨人ファンだけでなく相手チームのファンに対して、不可抗力とはいえ試合延期という事態を招いたことへの謝罪は絶対に必要だと思う。
選手にとっては、シーズン中の1試合かもしれないが…
中日戦は子供たちが夏休みに入った直後のカードだった。DeNA戦もオールスター明けの後半戦がスタートする最初のカードである。この6試合のチケットをファンは、どんな思いで手に入れただろうか。楽しみに待っていた試合が突然、延期になってしまった。そのときの失望感はどれくらいのものだったか、巨人の球団幹部は想像できないのだろうか。
「選手にとっては毎日続く、シーズンの中の1試合かもしれないが、スタンドに観戦にくるファンにとっては、その日、その試合しか来ることができない貴重な1試合かもしれない」
元巨人の松井秀喜さんが、師と仰ぐ長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督から言われた言葉だ。それが松井さんが連続試合出場にこだわった理由の一つだった、というのは有名な話だ。
そうしてそういう今日の1試合に対する考え方は、長嶋終身名誉監督や松井さんだけでなく、巨人の伝統として受け継がれてきているものでもあるはずだ。