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オリンピックPRESSBACK NUMBER
柔道ウルフアロンが今明かす“あの東京五輪”後の本音「昨年末まで練習は4回ぐらいしか…」「ゆくゆくは全日本の監督にもなりたい」
text by
岩尾哲大(時事通信)Tetsuhiro Iwao
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/07/29 11:03
東京五輪を制したウルフアロン。すでにパリ、そしてロサンゼルスへの展望は固まっているという
「今の状態がベストじゃないって思ってしまう」
五輪直後から今年1月末までに100回にのぼったテレビやラジオの出演は、その後激減させた。勝負の場に戻るためだ。復帰戦の予定だった4月の全日本選抜体重別選手権は右足首の靱帯損傷のため直前になって欠場したが、約1年ぶりの試合となる8月上旬のアジア選手権に向けて、調整の強度を上げている。今では「パリ(を目指す気持ち)ははっきりしている」と言い切れる。
ただ、1年前のような状態に戻り切っていないことは自覚している。「自分が一番強かったときを分かっているから。良くも悪くも、自分の中でそれが過大評価されて、今の状態がベストじゃないってずっと思ってしまう。難しい」。大願を果たすために心技体を研ぎ澄ませた昨年の夏と、再始動して間もない今を比べると、大きな隔たりがあるのは事実だ。
注目度は急上昇…それでもプレッシャーはない
どんな競技でも、金メダリストは勝って当然のような目で見られがち。さらに、自身のメディア出演により注目度が以前より上がっているのは間違いない。それでも、プレッシャーについては「ない」ときっぱり言える。なぜなら「取る物は既に取ったから」。だが、それは必ずしもいいことばかりではないという。
「緊張感がないのもよくない。プレッシャーって感じた方がいいと僕は思っている。プレッシャーを感じることによって、試合に向けて気持ちも高まるし、モチベーションも上がっていくし、勝たなきゃいけない気持ちも強くなる。
やっぱりある程度のプレッシャーや緊張感は必要。試合に行ったときに緊張しなくなったら、それはもう引退するときだと思っている。勝たなくてもいいって思っちゃっていることだと思うので。勝とうと思えば思うほど、練習でやってきたものが出るかどうか不安になるし、勝てるかなと思って緊張するのは当たり前。緊張感がある中で、いい技って必ず出てくるので」
それは真剣勝負を重ねることで、再び湧き上がってくるものなのだろう。