Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
大谷翔平と“お父さん”のような大打者プホルス…球宴で“再会”したレジェンドが語っていた大谷への予言「二刀流ができるのは彼しかいない」
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byAFLO
posted2022/07/22 11:00
アルバート・プホルス 1980年1月16日、ドミニカ共和国生まれ。カージナルス時代には10年連続で3割30本100打点を達成。5年間で3度のMVPに輝く。'11年Wシリーズ優勝。'12年エンゼルスに加入後、今季途中でドジャースに移籍。191cm、107kg
だが、今季の大谷の出場は、投打で158試合にも及んだ。今季に限っては、プホルスの心配も無用に終わったわけだが、開幕前からプホルスは大谷の大ブレークを確信するかのような発言をしていた。
「春キャンプを通じて、彼はここまでは健康でいられた。今年のポイントは健康でいられるかどうかだと思う。昨年、彼は膝の状態が万全ではなかった。私も同じ経験をしたことがあるからわかるのだが、下半身の状態が悪くなり始めると、同じ練習をしたと思っていても、効果や結果は同じではなくなってしまうんだ。ショウヘイが今年、膝や下半身に問題なく過ごすことができれば、素晴らしい一年になることは間違いない。それはスプリング・トレーニングで既に証明したことでもある」
プホルス「見ていてこれほど楽しいものはない」
メジャー4年目の春キャンプ。大谷は投打に於いて最高の仕上がりを見せていた。
投げては、オープン戦開始前の2月27日の時点で、味方相手のライブBP(シート打撃)で100マイル(約161km)を計測し、オープン戦初登板となった3月5日のアスレチックス戦でも再び100マイルの直球を投げ込んだ。そして、打撃はもっと凄かった。
3月1日のホワイトソックス戦でマルチ安打スタートすると11試合連続安打を記録した。本塁打も3月3日のレンジャーズ戦で中堅バックスクリーンを越えていく特大弾に始まり、15日のレッズ戦では2打席連続で逆方向へと叩き込んだ。そして、その翌日は昨季のサイ・ヤング賞に輝いたインディアンスの右腕シェーン・ビーバーから再びバックスクリーン越えの大アーチ。最終成績は、打率.548、5本塁打、8打点。OPSは驚異の1.604を挙げた。これには師匠のプホルスも驚きを隠さず、近年稀に見るベスト・インプレッション(最も印象深い)だと語った。
「本塁打はすべて中堅から逆方向へ放った。しかもそのすべての飛距離が半端ではなかった。彼はボールを引っ張って飛ばすだけでなく、逆方向へも大きく飛ばすことができる。彼は自分がボールを飛ばしたい方向へ自由に飛ばすことができるんだ。これは彼が健康である何よりの証拠であり、ここ数年は見たことがなかった状態だ。上半身もかなり大きくなっているのがわかる。とても素晴らしいし、見ていてこれほど楽しいものはない。今季が楽しみだ」
親が子の成長を嬉しく見守るかのように、実に優しい表情で微笑んだプホルス。殿堂入り間違いなしの大ベテランにとっても、大谷は特別な選手であった。