本郷　帰りたくなりました（笑）。試合前も色んな感情がごちゃごちゃになっていた気がします。ショートで3番以内に入らないと、フリーで大逆転するのは難しそうなメンバーでしたし。滑走順抽選のときが一番緊張したかも。何番でも変わらないって分かっていても緊張するんですよね。

――SPは想定通り3位につけて五輪の切符も見えていたかと思います。運命のFSは今でも思い起こせますか？

本郷　フリーでも自分のできることをやろうと思っていました。でも前半3つ目のトリプルルッツで転んだときに「ああ……」って。ちょっとタイミングが狂って、気づいたらコケてたっていう感じでした。

　五輪に行くには一つもミスしちゃダメだと分かっていたから、その時点で「五輪には行けない」っていうのは頭によぎっていたと思います。でも、パッと切り替えられました。

演技を終わった後に「ああ自分の挑戦が終わったな」

――ハードな練習にも耐えて追い続けた夢が消えた瞬間に、パッと気持ちを切り替えられたのはなぜでしょう。

本郷　一つの作品としてプログラムを見てほしい気持ちが強くて、失敗はあまり引きずりませんでした。終わった後に「あっそういえば他にも失敗してたわ」って気づくくらい。前の自分だったら失敗した瞬間に諦めていたと思います。

――演技が終わった後の悔しそうな、でも納得したような表情が印象的でした。

本郷　「ああ自分の挑戦が終わったな」と。オリンピックには出られないことはもう悟っていたので。でもやれることはやってきたし、それでダメだったならここまでだったんだな、と自分を納得させたんだと思います。

――目の前にあった五輪の切符を掴むことはできず、色んな感情も交錯したと思います。本郷さんにとって五輪とはどんな存在ですか？

本郷　なんだろう……。小学校の卒業文集に「オリンピックに出たい」「海外試合で表彰台に乗りたい」って色々書いていたなかで、オリンピックだけが叶えられなくて。いまだにオリンピックってどんな舞台なんだろうって考えることもあるけれど、すごく引きずっているわけではないんです。

　小さい頃には想像できなかったくらい、世界の色んな舞台を経験させてもらえたし、母にも「よく頑張ったよ」と言ってもらえてすごくホッとしました。でも、フィギュアに限らず色んな競技を見ていて、オリンピックへの憧れというか、かっこいいなという気持ちはありますね。

撮影＝山元茂樹

＜#3へ続く＞

#3に続く

本郷理華25歳が明かす、五輪落選から“空白の1年半”…宝石店バイトで気づいた「スケートじゃなくても頑張ったら生きていける」

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。