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「五輪という夢だけが叶えられなかった」本郷理華25歳が語った“スケートが好きから義務になった瞬間”《特別グラビア》
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph byShigeki Yamamoto
posted2022/07/23 11:01
昨年6月に現役引退を発表、今年1月に引退セレモニーが開かれたフィギュアスケーターの本郷理華さん。現役時代のすべてを振り返るロングインタビューです
本郷 やっぱり本当に大丈夫かなという不安ばかりだったと思います。でも、3年目は表現する楽しさを知った年でもあったんです。ジャンプは波があったけど、表現には波がなくて。もっとプログラムを磨いていきたいと思えたのは、振付家のシェイ＝リーン・ボーンさんとの出会いがきっかけでした。
――シニア4年目のSP「カルミナ・ブラーナ」とFS「フリーダ」は共に、シェイ＝リーンさんの振り付けでしたね。
本郷 「フリーダ」は、フリーダ・カーロさんという画家の女性の波乱万丈な人生を描いた映画でした。シェイ＝リーンさんは、そのフリーダの人生と私の現状を重ね合わせたそうで、「理華らしいフリーダを演じてほしい」って話してくれたんです。
「スケートが好きだという気持ちを取り戻して、楽しんで滑ってほしいからこのプログラムを作ったんだよ」って言われて。一つのプログラムにそんなメッセージを込めてくれたと知ったから、そうなるようにしたいと思えました。
――本郷さんが追い詰められているのを、周りの方々も感じ取っていたのかもしれませんね。
本郷 どうなんだろう。あ、でもシェイ＝リーンさんは感じ取っていたかもしれないです。練習中に「理華がこれをやらなきゃいけないって考えているのがわかるよ」って言われて。「もっとこうしてみたいとか、こういう滑りをしたいっていう気持ちに変えてみたら」と、アドバイスされましたね。
――そうした助言もあって、シーズン序盤はポジティブな気持ちで入れたのでしょうか？
本郷 ケガを引きずる部分もあったかもしれないですが、せっかく作っていただいたプログラムをいい状態で見てもらえるように頑張りたいなと。シーズンに入るまでに2つともノーミスでできるようにしようと思って、毎日ノーミスで滑れるまで練習していました。
日によっては、邦和（スポーツランド）で朝練を1～2時間やって、中京大に移動して、授業の空きコマでも練習して。大学にリンクがあるとこういうことができちゃう（笑）。朝から滑り始めて、気づいたら夜になることも。本当に一日中リンクの上にいましたね。
――かなりハードな練習ですね……。ノーミスで仕上げたいというのは、やはり五輪の選考を意識してのことですか。
本郷 プログラムを大事にしたいという思いと、五輪に行けるのが2枠しかなかったので焦りというか余裕がなかったんです。自分の夢を叶えるために、ついにやらなきゃいけない時が来たんだと怖くなる日もありましたね。全日本が近づくにつれて練習もピリピリしていたし、もっとやらないとダメなんじゃないかとかすごく思っていた気がします。
運命の全日本選手権「色んな感情がごちゃごちゃに」
――代表選考がかかる全日本選手権は本郷さんより若い選手も多く、近年稀に見る大激戦でした。
