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「初戦でつまづくと心理的重圧が」「日本の弱点?それは私の…」ドイツ代表監督がココだけに語るW杯への戦略〈フリック独占インタビュー〉
text by
アレクシス・メヌーゲAlexis Menuge
photograph byKYODO
posted2022/07/19 11:10
バイエルンも率いた名将ハンジ・フリック。W杯へどんな戦略を練っているのか
「とても俊敏で、チームがボールを失ったときに即座にプレスをかけていた。攻撃の選手にもかかわらず、チームへ貢献する意識が強い選手だと感じたよ」
――シュツットガルトでキャプテンを務める遠藤航も、日本代表の中心選手です。
「もちろん知っている。シュツットガルトは残留争いに巻き込まれたので、キャプテンとして簡単なシーズンではないだろう。だが、それは成長のチャンスでもある。プレーから強い気持ちが感じられる選手だ」
――日本代表の長所をどう見ていますか。
「非常にポテンシャルがあるチームで、ブンデスリーガでたくさんの選手がプレーしていることからも、それがわかる。プレースタイルとしてはスピードがあり、速い攻撃を武器にしているチームだと思う」
日本代表の弱点?それは私の……
――日本代表の弱点を挙げるなら?
「それは私の心の中に留めておこう(笑)」
――初戦の重要性をどう考えますか?
「W杯では初戦の結果によって、勢いに乗れるかが決まると言っても過言ではない。もし初戦でつまずくと、即座に心理的なプレッシャーがかかってしまう。私たちはそれを回避したい。つまり初戦でしっかり勝利して、自信を掴み取るつもりだ」
――グループ分けの印象は?
「W杯では簡単なグループなどない。それはE組も同じ。対戦する3チームとも、三者三様の長所がある。どんな相手だろうと、絶対に侮ってはいけない」
――あなたはコーチとしてW杯を制しました。W杯で最も大事なことは?
「チームの一体感だね。全員が同じ方向を見て、他者のために行動できるチームでなければ、大会中のさまざまな困難を乗り越えられない。それが成功の絶対条件だ」
――'19-'20シーズンのCLは、新型コロナ禍のために準々決勝以降がポルトガルで集中開催されました。その際、あなたは選手のコンディションを効率的に高め、驚異的なハイプレスを実現しました。それと同じ強度をW杯で見せたいですか?
「それが私の目標だ。もし高いインテンシティを実現できれば、カタールの地で優勝候補の筆頭になれる」
フリックは休むことを知らない。今年2月にはブレントフォードのバイタリー・ジャネルトを極秘視察し、スタジアムの通路で面談した。この23歳のMFはドイツでほぼ無名だったが、その後チェルシー戦で2得点をあげて時の人に。W杯の秘密兵器になると言われている。「全ポジションが常に高い活動量を発揮するサッカーをしたい」と語る指揮官は、その準備を着々と進めている。