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フェデラーが”靴底オレンジ”だけで違反、女子選手のスポーツブラに変更を要求…ウィンブルドンの謎すぎる「ホワイト規則」を知っていますか? 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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posted2022/07/14 11:02

フェデラーが”靴底オレンジ”だけで違反、女子選手のスポーツブラに変更を要求…ウィンブルドンの謎すぎる「ホワイト規則」を知っていますか?<Number Web> photograph by Getty Images

2013年、シューズのソールがオレンジ色だったフェデラーは違反とされ、次戦から別の靴を履いたが…

 ウィンブルドンを運営するオール・イングランド・ローン・テニスクラブの説明によれば、ルール厳格化の理由はこうだ。

「芝との調和がもっとも美しい色、派手なファッションでファンの目を引くのではなく、シンプルにプレーが際立つ色——それが白色なのだ」

女子選手のスポーツブラまで違反に

 2014年以降、「そこまでする?」と議論を呼ぶ事例が多くなった。よく例に出されるのがその初年、地元イギリスのナオミ・ブローディの1回戦のこと。着用していたスポーツブラが違反とされ、別のものに替えるように言われたが、ほかに持っておらず、<ノーブラ>でプレーしなくてはならなかった。ほかにも数人の女子選手が同じ目に遭ったそうだが、1987年にウィンブルドンを制したパット・キャッシュはレジェンドの部を棄権して抗議を表明した。しかし流れは変わらず、2017年にはビーナス・ウィリアムズが着用していたブラのストラップがノースリーブのウェアからはみ出して見えていたため、試合中に取り替えさせられている。

 こうした厳しいルールの下、メーカーは知恵を絞り、センスを働かせて、アピール力のあるデザインを編み出し、契約選手たちを強く、カッコよく、可愛く見せようとする。しかし、白ならなんでもいいというわけではないこともまた歴史が教えている。古くは1985年にアメリカのアン・ホワイトが着用した全身白のボディスーツが話題をさらった。その日はそのままプレーしたが、セットを1-1と分けたところで日没順延となり、翌日は着用を認められなかった。ホワイトは敗れたが、その名はウィンブルドンのファッション事件簿に永遠に刻まれることになった。

 さらに遡れば、戦後のテニスファッションに革命を起こした元選手でデザイナーのテッド・ティンリングは、そのセクシーなファッションによって女子テニスにみだらなイメージを増幅させるとして、33年間もウィンブルドンへの出入りが禁止された。ただ、彼の手がけるデザイン自体が全て禁止されたわけではなく、前述のブエノの色付きアンスコもティンリングのデザインである。

 クラブ側と、デザイナー、メーカー、選手との戦いが繰り広げられてきたウィンブルドン。そしてついに、オール・ホワイト・ルールに抗議する女性グループまでが現れた。女子決勝の日、真っ白のトップスに真っ赤のショートパンツを身につけてセンターコート前でルール撤廃を訴えたのだ。白いプラカードには、「考えてみて。私たちには生理があるのよ」などと赤い文字で書かれていた。勇気を持ってこのことを口にする選手も出てきている。これにはクラブ側も「検討する」と言わざるをえない。<ファッション戦争>は新たなチャプターに突入した。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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