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フェデラーが”靴底オレンジ”だけで違反、女子選手のスポーツブラに変更を要求…ウィンブルドンの謎すぎる「ホワイト規則」を知っていますか?
posted2022/07/14 11:02
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
ロシアとベラルーシの選手の排除やランキングポイントを付与しないなど特別な措置のもと行われた今年のウィンブルドンで、以前から特別だった「あのルール」があらためて注目された。ウィンブルドンの試合コートでは全身白を着用しなくてはならないという<オール・ホワイト・ルール>である。
”ルール”の厳格化は意外と最近から
引き金になったのは、“反逆児”ニック・キリオスが赤いエア・ジョーダンとジョーダン・キャップを被ってオンコート・インタビューに臨んだ一件。これに目鯨を立てる人々がいたが、記者会見では「オレがしたいようにやっただけさ」と悪びれなかったキリオス。開幕前の会見でも「せめて黒いバンダナとかリストバンドとか許してもらえればと思うよ。だって、そのほうがカッコいいじゃないか。でもルールは変わらないだろうね。かっこよく見えるかどうかなんて、ウィンブルドンにはどうでもいいんだから」と言い放った。
実はこのルールが今ほど厳しくなったのは、2014年とごく最近のことである。つまり堅苦しい伝統を守っているのではなく、より古臭いイメージのルールを新たに作って引き締めたのだ。1877年からその歴史が始まったウィンブルドンでは「白を基調とすること」という程度で、それすら規則となったのは1963年だった。ウィンブルドンで3度優勝したブラジルのマリア・ブエノが前年の1962年にピンクのアンダースコートを着用したことで、カラーウェアの流行りに歯止めをかけるために意識の徹底が呼びかけられた。
もともと、テニスコートでは白いウェアを着用するのが当たり前だった。テニスは男女の社交の場として発展した娯楽であり、紳士淑女たちにとって<汗染み>は品のないものだったからだ。また、白は上流階級のシンボリックな色でもあった。白を常に清潔な白に保つことができるのは上流家庭の人々だけである。
70~80sはウィンブルドンもカラフルに
その慣習は競技としてのテニスにも残った。かつて選手権の参加者たちは、ウェアの一部に色が入っているかどうかよりも、基調となる白の色調に神経を使っていたという。それはルールというよりも身だしなみだった。ウィンブルドンに限らず、他のグランドスラムでも選手たちは白いウェアを着用していた。しかし1960年代から徐々にカラーが大胆に取り入れられるようになり、全米オープンは1972年にカラーウェアの着用をおおっぴらに許した。