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“J1出場ゼロ&代表歴なし”でもベルギー名門から1.6億円超オファー…164cm本間至恩(21)は何がスゴい? 新潟との「幸せな別れ」とは
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2022/07/11 11:02
J1昇格を目指すJ2アルビレックス新潟からベルギーリーグで3連覇中の名門、クラブ・ブルージュへの移籍が濃厚となったMF本間至恩(21歳)
当時高校2年だった2017年4月にトップチームに2種登録され、同年5月31日にはルヴァンカップのヴィッセル神戸戦に途中出場してクラブ史上最年少で公式戦に出場した。一緒にプレーしたクラブのレジェンド・本間勲(現・アルビレックス新潟強化部門スカウト)は当時の本間の印象をこう振り返る。
「相手の逆を取るドリブラーはたくさんいますが、(逆を)取った後の速さとなると、あそこまで速い選手はそういないと思います。体勢が崩れた後にあのスピードでグッとこられたらDFは対応できませんし、もう1枚のDFがカバーに入ったとしても、次の動きのフェーズに入っていて加速しているので捕まえきれない。結局はファールで倒すしかない。しかもそれを高2でやっていたわけですから、『ちょっとモノが違うな』と思っていました」
この頃からサポーターの間では「新潟の至宝」と呼ばれるようになった。
「ドリブルだけの選手と思われたくない」
筆者にも忘れられないプレーがある。2018年5月、デンカビッグスワンスタジアムで行われたプリンスリーグ北信越第7節・日本文理高戦。高3の本間は2トップの一角として出場した。
ボールを持つとフィジカルに勝る日本文理の選手たちが一斉に本間を取り囲むが、決して慌てることなくボールを受けると、鮮やかな殺陣のようなキレ、そして大胆なボールタッチで突破し、チャンスを量産。2-0で迎えた74分には左サイドからカットインを仕掛けると、ノールックでダイレクトスルーパスを通して3点目の起点となった。そのプレーを当時、こう振り返っている。
「3点目はチームにとっても理想的なゴールだったと思います。仕掛けてラストパスは常に意識していて、あのシーンでは左サイドから中にカットインしたときに斜めから上がって来た味方が見えたので、オフサイドにならないようにタイミング早めに出してから、すぐに中に入って行って折り返しを自分が打とうと思いました。結果的には仲間が決めてくれたので良かったです」
この言葉を聞いた筆者は、「ゴールまでの道筋は、いくつか見えていた?」と質問した。すると本間は、澱むことなくこう答えた。
「ドリブルが得意なのですが、ドリブルだけの選手とは思われたくないんです。選択肢がないからドリブルをするのではなくて、いくつかの中からドリブルを選択しているつもりです。パスならどうなるのか、ドリブルならどうなるのか、シュートやクロスを入れたらどうなるかと考えながらやっています」
客観的に状況と手数を把握した上で、自分の長所であるドリブルを繰り出す。それは相手にとっては脅威でしかない。