「あのプレーができたのも、やっぱり割り切りだと思うんです。自信を持ってプレーすることはもちろん、打てなかったら切り替えて守備に集中する。やっぱり打席のことを引きずっていたら、ああいったプレーはできないと思います。打撃は打撃、守備は守備、走塁は走塁と区切って集中することが今に繋がっていると思うんですよね」

心配になるほど練習に打ち込むタイプ

　ドラフト6位で入団した約2年前、蝦名に話を聞いたことがあるのだが、真面目で朴訥な青年といった印象だった。表には見えにくい内なる炎をメラメラとさせ、とにかく不安を解消するために練習に打ち込むタイプ。素晴らしい姿勢だとは思うが、逆に根を詰め過ぎてパンクしなければいいなと、懸念を持ったものだ。案の定、ルーキーとして帯同された一軍キャンプではいきなり左手の薬指を骨折、その後も怪我が絶えず、右足首に関しては2度も手術をしている。

　ただ今季の蝦名を見るかぎり、心の余裕というか、視野を広く持つことのできる選手に成長したように感じられる。2年という短い期間であるが、酸いも甘いも経験したことで人間としての奥行きが生まれた。

©Kiichi Matsumoto

「僕はこれまで打てても打てなくても、とにかく練習するというスタイルでやってきたのですが、今シーズンは少し変えたんです。野球以外の時間、例えばケアに割く時間をこれまで以上に大切にしたり、練習もポイントを決めて短時間に効率的にするようにしました。やり過ぎるのを抑えるのも練習だと思い、休むときはしっかり休む。こういったことが打席に入っての割り切りや我慢に繋がっているのかなって」

メンタルスキルコーチから指摘されたこと

　柔和な表情で蝦名はそう言った。根っ子にある真面目さは変わらないが、野球やプロの世界というものを俯瞰できるようになった。チームのメンタルスキルコーチである遠藤拓哉氏からも同様のことを指摘されたという。

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