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カンボジア国籍で五輪出場、猫ひろし44歳が今明かす“大バッシング”の真相「今後は五輪を目指すつもりも、国籍を戻すつもりもない」
posted2022/06/24 11:03
text by
音部美穂Miho Otobe
photograph by
Shiro Miyake/Getty Images
お笑い芸人の猫ひろしがカンボジアに国籍を変更し、オリンピックを目指す――。
2011年、そのニュースは驚きをもって報じられ、やがて国内外を巻き込む騒動へと発展する。
すべての始まりは、堀江貴文氏のインターネット番組に出演したこと。堀江氏に悩みを相談するという趣旨の企画で、収録に行ったら「猫ひろし再生計画」なるものが用意されていたという。
「堀江さんからは『寺社仏閣芸人は?』とか『東大受験をしたら?』とか、次々とアイディアが出てきて。その中に、『マラソンが速いんだから、国籍を変えて五輪に出たら?』というのがあった。
その瞬間、僕の頭にパッと絵が浮かんだんですよ。速いアフリカ人選手の横で、“猫魂”のTシャツ姿で真顔で走っている僕の姿が。それが単純に面白いなって思っちゃって。
当然、堀江さんも冗談だったと思うんですが、僕はすぐ乗り気になりました。
当時カンボジアで1位の選手のタイムが2時間31分。その頃の僕のベストタイムは2時間37分台だったので、もしかしたら本当にやれるんじゃないかって思ったんです。
カンボジア代表内定、日本での大バッシング
今考えれば、“縁”もあったのかもしれない。堀江氏の番組のスタッフの一人が、偶然にもカンボジアでゲストハウスを運営しており、「気になるんだったら、一度現地に行ってみませんか」と誘われ、たびたび渡航してカンボジアでのレースに出場するようになった。
「カンボジアのアンコールワット国際ハーフマラソンで『これで3位に入ったら、国籍を変更して五輪を目指す。ダメだったらもうやめよう』と決めて、走ったら3位に入った。これは、きっと何かあるんだって思えたんです」
2011年6月、国籍を変更してロンドン五輪を目指すことを発表。翌2012年の2月には、別府大分毎日マラソンで、当時カンボジア選手の中では最高となる2時間30分26秒の記録を叩き出し、ロンドン五輪のカンボジア代表に内定した。
しかし、直後から日本では「倫理的にどうなのか」「カンボジアの人に失礼だ」などといった批判が噴出し、猫は大バッシングを浴びた。