濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
安納サオリ「誰よりも目立って、一目惚れさせる」 華やかさの裏で、人気女子プロレスラーが明かした“苦悩と決意”「遠慮なんかしてられない」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/06/16 11:00
2020年からフリーで活動する安納サオリ。OZ、アイスリボン、センダイガールズに定期参戦している
今回に関して言えば、両者リングアウトの引き分けは不完全燃焼というわけでもなかったようだ。思い切り我をむき出しにして殴り、殴られて、それが気持ちよかった。夏すみれは主催者として、オファーを出した選手たちに「自由にやってほしかった」と言う。フリー選手は、腕を買われてそれぞれの団体で試合をする。どこに上がるのも自由。団体それぞれに流れがあり、求められる役割、立ち位置がある。だが『NOMADS'』ではいったんそれを忘れて、好きにやってくれというわけだ。
安納たちは、その通りにした。結果が両者リングアウトでもそれはそれでスッキリするものがあった。好き勝手に暴れることが大事だったのだ。
「この続きは、したいっちゃしたいし、したくないっちゃしたくないし」
そう安納が言うのは、朱崇花が単なる敵ではないからだ。
「組むことのほうが多いので。(朱崇花は)相手として見ても動き一つ、見せ方一つがキレイだしカッコいいですね。色気がある」
観客を“一目惚れ”させる安納の魅力
いつもと違う舞台、いつもと違うパートナーと相手。「あらためて自分がフリーなんだと実感しました」と安納は言う。「いろいろもどかしいこと、悔しいこともあるんですけど、いいこともたくさんありますね」。
もどかしいこと、悔しいこととは何だろうか。あらためて話を聞いた。アクトレスガールズではエース。フリーになってもOZアカデミー、アイスリボン、センダイガールズにレギュラー参戦しており“仕事”なら絶え間なくあると言っていい。どの団体でも存在感は抜群だ。プロレスは実力だけでなく華やかさも重要、というより華も実力のうち。とりわけ安納は“華”のカタマリのようなレスラーだ。彼女を初めて見た観客はほぼ間違いなく目を奪われる。攻め込まれて顔が苦痛に歪むところも、険しい目つきで反撃するところも、すべてが絵になるレスラーだ。
「大会の中で誰よりも目立って、一目惚れさせる」
いつもそんな気持ちで、安納はリングに立っているという。『NOMADS'』もそうだった。きっとこの日も、安納に“一目惚れ”した観客がいたはずだ。どんなカードでも安納サオリは安納サオリ。そんな感じもする。だがそれでは満足できない部分もある。