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“スーパー高校生”井上尚弥の衝撃… 国内トップクラスのプロを“ボコボコ”に「そのときですね、尚弥はかなりのところまでいくんじゃないかと」
posted2022/06/06 11:01
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
AFLO SPORT
<初出:Sports Graphic Number 2014/7/15臨時増刊号(2014年7月8日発売)、年齢・肩書などはすべて当時>
キッズ時代から才能の片鱗をのぞかせていた井上は、高校に入るといよいよ真価を発揮する。1年生でいきなりインターハイ、団体、選抜の高校3冠を達成。3年生になるとインドネシア大統領杯で金メダルを獲得し、世界選手権でベスト16に進出した。さらには全日本選手権でも優勝を飾った。
高校生が大人の大会である全日本選手権を制するのは異例中の異例のことだ。さらには日本勢が苦戦続きの国際大会でも結果を出し、井上はアマチュアボクンング界で知らぬ者のいない存在となっていった。
気の緩みが招いた忘れられない敗戦
だが、そんなスーパー高校生にも挫折はあった。アマチュア時代に残した戦績は81戦75勝(48KO・RSC)6敗。注目すべきは6つの敗北だ。その中でも高校2年生で初出場した全日本選手権の決勝は、ボクシング人生の大きなターニングポイントと言えるだろう。
井上父子はこの大会で、当然のように優勝を狙った。ライバルと目されたのは日大の柏崎刀翔、駒澤大の林田太郎。とくに柏崎が最大の壁になるという見方で周囲の意見は一致していた。ファイタータイプの林田と違い、柏崎は足を使った、いわば大人のボクシングができる。さすがの井上も柏崎のテクニックには及ばないと思われた。
しかし井上は、周囲の不安をよそに準決勝で柏崎から殊勲の勝利を挙げる。そして決勝で与しやすいと見ていた林田とぶつかり、まさかの完敗を喫したのだ。「いまだから言えますが……」と真吾が打ち明ける。
「柏崎君に勝って気を抜いた。決勝の前日、明日は優勝したらNHKのインタビューがあるから何て言おうか。そんな話をしていたほどです。一方の林田君は高校生には負けられないというものすごいプレッシャーを背負い、120%で勝負を挑んできた。あれは完全に自分の責任。たとえナオが浮かれていても、自分が褌を締め直さなくちゃいけなかった。もうめちゃくちゃ反省ですよ!」