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「光由クン、痛かった?」“海賊王女”KAIRIのミッションとは… スターダムの未来を担う天咲光由20歳に授けた“見えない羅針盤” 

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原壮史

原壮史Masashi Hara

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photograph byMasashi Hara

posted2022/06/05 11:00

「光由クン、痛かった?」“海賊王女”KAIRIのミッションとは… スターダムの未来を担う天咲光由20歳に授けた“見えない羅針盤”<Number Web> photograph by Masashi Hara

大田区総合体育館での試合後、「痛かった?」というKAIRIの問いかけに「痛かったです!」と答える天咲光由

 2日目にスターライト・キッドとのシングルマッチを戦ったKAIRIは試合後、鼓膜が破れたことを明かしつつ「痛みが嬉しいね。やっぱ、プロレスしてる実感って、痛みを感じてる時、その痛みに立ち向かう時にあると思うので。今日はちょっと課題が見つかったけど、あらためてプロレスって楽しいし、全部の試合がうまくいかないからこそ、プロレスは何年経っても、もっともっと上を目指して追求していかなくちゃいけないな、って思います」と語っていた。

 そんなKAIRIだからこそ、小川EPはミッションを託したのだろう。28日に組まれた豪華なタッグマッチは、天咲・林下という「最初から注目されてきた」側と、KAIRI・中野という「注目されず、負け続け、這い上がってきた」側という構図だったのだ。

「落ちこぼれ」だった海賊王女が授けた羅針盤

 元WWEスーパースターとしての帰還となったKAIRIだが、スターダム3期生としてデビューする前のプロテストでは1人だけ追試に。自ら「落ちこぼれ」「空回り」という言葉を使って当時を振り返るように、初めからスーパースターだったわけではない。“超未来戦士”でも“逸材”でもなかった彼女が思う、プロレスの難しさと楽しさ。試合を通じてそれを味わわせ、順風満帆のままでは決して持つことができない異なる視点を与える。最初から注目される存在であるということは「良いことでもあるけど、時には足を引っ張ってしまうこともある」(KAIRI)からだ。

 試練はこの1試合で終わらない。『NEW BLOOD3』(7月8日、品川インターシティホール)からは、“超新星5番勝負”がスタート。初戦はジュリアが壁となって立ちはだかる。「心がへし折れるような、試合中逃げ出したくなっちゃうような」試合にすると宣言した“お騒がせ女”を体感する天咲は、さらなる痛さと悔しさを溜め込みながら、てっぺんに咲く未来を目指すことになる。

 しかし、どんなに上手くいかないことがあっても、どんなに迷っても、天咲は最後には正しい道を見つけることができるだろう。これからキャリアを歩んでいく“超未来戦士”は、“海賊王女”から目には見えない羅針盤を授かったのだから。

 フィニッシュの直前、見事な「くの字」で降ってくるKAIRIを、仰向けになった天咲は最後まで見ていた。上体が少し起き上がるほど強く目に焼き付けたその光景を、これから何度も何度も思い出すことになるだろう。痛さ、悔しさ、そして難しさと共にある、プロレスの終わりなき面白さを噛み締めながら。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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