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「光由クン、痛かった?」“海賊王女”KAIRIのミッションとは… スターダムの未来を担う天咲光由20歳に授けた“見えない羅針盤”
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2022/06/05 11:00
大田区総合体育館での試合後、「痛かった?」というKAIRIの問いかけに「痛かったです!」と答える天咲光由
5月13日に行われた『NEW BLOOD 2』には出場することができなかったが、映像で次なる相手が発表されると会場は驚きに包まれた。林下とタッグを組み、中野たむ、そしてKAIRIと激突。ビッグネームとの遭遇という注目の一戦を組んだ小川EPは、この試合を「大きな試練」とし「KAIRIにはミッションを与えている」と含みを持たせた。
KAIRIが完遂したミッションとは?
迎えた5月28日の大田区総合体育館大会。スターダムにある全てのベルトが賭けられ、10試合中7試合がタイトルマッチとなったこの日、天咲とKAIRIは第5試合で対峙した。
先に入場した天咲は、会場中の視線を一身に浴びて入場してきたKAIRIをじっと見つめると、林下に先発を志願。天咲-中野、林下-KAIRIという組み合わせを経て、ようやく“その時”が来た。
「2回くらい練習させていただいた」というKAIRIに今の自分の全力をぶつけていった天咲は、コーナーのKAIRIにスペースローリングエルボーで突っ込むと、その勢いのままドロップキックへ。しかし、なんとKAIRIは倒れず。ロープに走ってもう一度放っても、KAIRIは胸を突き出して受けたうえで倒れない。思いもよらない展開に攻め急いだ天咲は、攻勢に転じたKAIRIと中野の前に防戦一方になってしまった。
もっとも、天咲が諦めることはなかった。強烈な打撃と関節技を耐え抜くと、林下の助けも得て反撃。馬乗りになってがむしゃらにエルボーを連打するその姿からは、勝利への執念が溢れていた。
しかし、その後の腕攻めを凌がれると、最後は再び力の差を見せつけられ、KAIRIにカットラス(スピニング・バックフィスト)からのインセイン・エルボーという必殺コースで3カウントを奪われた。
勝利すると、KAIRIは小さく「よっしゃ」と声に出した。残り試合時間30秒を切ってからのギリギリでの決着だったが、だから勝利を喜んだ、ということではないだろう。「ミッションを完遂した」という手応えと充実感が、その表情には含まれていた。
ミッションとは何だったのだろうか。
このカードが組まれるよりも前、KAIRIがスターダムに帰還した3月の両国国技館2連戦にそのヒントがあった。