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「光由クン、痛かった?」“海賊王女”KAIRIのミッションとは… スターダムの未来を担う天咲光由20歳に授けた“見えない羅針盤”
posted2022/06/05 11:00
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
「光由クン、どうだった……? 痛かった?」
5月28日、女子プロレス・スターダムの大田区総合体育館大会。勝利した“海賊王女”KAIRIが“超未来戦士”天咲光由に語りかける。
「痛かったです!」
天咲が叫ぶと、KAIRIは満足そうだった。
「そうだ! プロレスは痛いんだ! だけど、それが溜まって溜まって、負け続けて、悔しい気持ち、痛い気持ちを溜めて、それで勝つからみんなが感動するんだ! だから、プロレスは面白いの!」
異例のスピードで階段を駆け上る天咲光由
天咲は約1年間の練習生期間を経て、今年の2月19日にプロテストに合格した。デビューしたのは3月11日のことだ。
若手選手主体の新たなコンセプトの興行『NEW BLOOD』を立ち上げたスターダムのロッシー小川エグゼクティブプロデューサー(EP)は、彼女のデビュー戦をメインイベントに配した。シングルマッチで、相手は2020年11月15日から2021年12月29日まで1年以上にわたって赤いベルトを巻いていた “スターダムの逸材”林下詩美。勝利することは出来なかったが、デビュー前から天咲の素材としての良さ評価していた林下は、彼女を自身が所属する(※現在はリーダー)クイーンズ・クエスト(QQ)に勧誘。天咲はデビュー戦を終えると同時にユニットに所属することになった。
QQは翌日に控えていた大江戸隊との5vs5綱引きマッチの1枠をXとしていた。天咲はそこに入り、綱引きの結果、スターライト・キッドとメインイベントで激突することに。テキサスクローバーホールドでギブアップ負けを喫したものの、2日連続でメインイベンターになったスーパールーキーへの注目度は高まる一方だった。
その注目の中、翌3月13日の後楽園大会ではAZMとのタッグで初勝利(※AZMが月山和香から勝利)を記録。デビューからわずか3日、3試合目で勝ち名乗りを受けた。
さらに、4月24日の京都大会では、メインの8人タッグマッチで月山からフォール勝ち。自力での初勝利も記録してみせた。この京都大会と前日の神戸大会は『天咲光由凱旋シリーズ1』と銘打たれていた。京都市出身のため確かに凱旋試合であるとはいえ、デビューして1カ月の選手の名がシリーズタイトルにつけられた。しかも、1ということは2も決定済み(6月25日、京都)ということだ。
流れが速いスターダムとはいえ、これほどのスピードで階段を駆け上がっていくのは流石に異例だった。しかし、物販の長蛇の列が途切れずに大会開始が遅れるほどの大盛況ぶりと、集中攻撃を浴びながらも耐え抜き、最後には決め技の天聖(ダブルアーム式パイルドライバー)を完璧に決めた堂々たる戦いぶりは、彼女が大きな期待を寄せられるに相応しい存在であることを示していた。