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[名匠が明かす4強の勝算(1)]ジオグリフ&イクイノックス「ワンツーフィニッシュをもう一度」
posted2022/05/19 07:04
text by
藤井真俊(東京スポーツ)Masatoshi Fujii
photograph by
Photostud
美浦トレセンの“北の杜地区”に位置する木村哲也廐舎。トレセンの中では珍しいレンガ造りの塀に、美しく手入れをされた木々や花壇が訪れる者の目を奪う。
「ヨーロッパの廐舎への憧れがあるんですよね。レンガの温かさと自然の植物が共存している空間。イングリッシュガーデンといいますか、ああいう趣きのある廐舎に近づけられたらと思っていまして……。普段の水やりや季節ごとの花の植え替えも自分でやっているんですよ。細かな手入れや観察など地味な作業の積み重ねですけど、こういうことが自然にできている時は、自分の心に余裕があるということだと思うんです。そしてこれは馬と向き合う毎日の仕事にも通じる部分もあると思っています」
今年で開業12年目をむかえた同廐舎。すでに通算勝利数は300を超え、数多くの重賞タイトルも手にしてきた。そして4月17日に行われた皐月賞では管理するジオグリフとイクイノックスがワンツーフィニッシュ。同レースでは史上4回目の快挙だった。人気面に目を向ければジオグリフが5番人気でイクイノックスは3番人気。ともに有力と目されていただけに、戦前から“ワンツー”を決める予感もあったのではないか。そんな疑問を投げかけると、木村は相好を崩しながらも首を横に振った。
「そんな余裕はありませんよ。それぞれの馬を一生懸命に調教するので手一杯ですから。ただその週の火曜日の朝に、国枝(栄調教師)先生から声をかけられたんですよね。『おう、今週の皐月賞は1、2着だな!』って。週始めからブッこんでくるな~って思いましたよ(苦笑)。その1週前の桜花賞のプレサージュリフトの共同記者会見の際にも、皐月賞のジオグリフ、イクイノックスについて取材を受ける機会がありました。そういった周囲とのコミュニケーションのなかで、2頭が高い注目を集めているのだなとは感じていました」