珠玉の1敗BACK NUMBER

伊藤美誠――「私は絶対に変わる」谷底で誓った決意。

posted2022/05/17 07:01

 
伊藤美誠――「私は絶対に変わる」谷底で誓った決意。<Number Web> photograph by Nittaku

'17年の全日本・安藤戦。優勝は史上最年少(16歳9カ月)の平野だった

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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Nittaku

第一線で活躍するアスリートは、敗戦から何を学ぶのか――。東京オリンピックで3つのメダルを獲得した“みまちゃん”が衝撃告白と共に、5年前、16歳で直面した転機を振り返った。

【Defeated Game】
2017年1月20日 卓球全日本選手権 5回戦
安藤みなみ 4-2 伊藤美誠

   ◇

 シビれるシチュエーションであればあるほど、伊藤美誠は輝きを放つ。

 水谷隼とのコンビで金メダルを手にした東京オリンピック混合ダブルスがまさにそうだった。最強中国を相手にしたあの決勝戦、呼吸ひとつ乱さずに攻め倒していく姿勢は大魔王を超えてまるで鬼神のごとし。20歳とは思えぬ威風堂々のオーラを身にまとっていた。

 ただ、元々備わっていたわけではない。彼女にとっての「珠玉の1敗」がなければ、きっとそこには到達していなかった。

 2017年1月の全日本選手権。伊藤は5回戦で専修大の安藤みなみと対戦した。当時世界ランキング146位の安藤に対して同8位。リオオリンピック女子団体の銅メダリストである伊藤は優勝候補の一角として順当に突破すると見られていた。

 2-2のイーブンとなって迎えた第5ゲーム。せっかくデュースに持ち込んだ接戦を落としてしまう。思い切りが出てきた相手に対して、受け身になる自分。最後は追い上げることもできないままゲームを終えると、力なくひざから崩れ落ちた。

「あの頃“リオのメダリストにふさわしいだけの選手になりたい”とずっと言っていたんです。今思うと、16歳の自分にプレッシャーをかけ過ぎていたのかもしれません。リオの後、日本での大会は初めてで硬くなったところもあります。相手が向かってくるのは分かっていて、自分が逆に向かっていかなきゃいけなかったのに、押されて、やられっ放しという感じで。チャレンジャーとしての気持ちが足りていなかった」

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