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タイガー・クイーンは“女子プロレスの生態系”を破壊している? 男女タイガータッグ結成で無敗継続も、今後求められる“世界観の構築”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/05/12 11:01
自身2度目のミックスマッチに挑み、タイガー・スープレックスで世羅りさから3カウントを奪ったタイガー・クイーン
クイーンは“女子プロレスの生態系”を破壊している
とてつもない結果だ。プロレスにはボクシングのようなランキングはないが、選手は格、いわば“見えない番付”のようなものを感じながら試合をしているし、ファンも同じものを感じながら試合を見ていると思う。
その見えない番付を、クイーンは次々と食い破っている。言い方を変えれば、女子プロレスの生態系を破壊している。それでいて、クイーンは今のところ生態系の頂点に立とうとしているわけではなさそうだ。「○○に勝った」という実績を持って何かしらのタイトルに挑戦するということがない。
初代タイガーマスクも勝ちまくった。だがそのことで新日本プロレスを潤わせ、新日ジュニアヘビー級戦線の主役として自分中心に生態系を形成していった。負けた選手も“一座”に貢献したことになる。
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一方、タイガー・クイーンはさまざまな団体の選手(フリーも含め)に勝っている。それでも既存の団体の生態系に絡まないのであれば、主戦場であるストロングスタイルプロレスとディアナで自分の生態系、タイガー・クイーンの“一座”を作っていくことが求められる。生態系を壊すだけ壊して何も作らないというわけにはいかないはずだ。
今後のクイーンと団体に求められることとは?
佐山が言っていたように“女性版ダイナマイト・キッド”を育成するというのも一つの手だし、それならば“女性版ブラック・タイガー”も期待したい。もちろん、これまでクイーンが勝ってきた選手との再戦も。今のところは“試合しました、勝ちました”の繰り返し。だがこれからは団体とクイーンがどんな世界観を築いていくかがポイントになる。
ディアナ後楽園でクイーンが世羅に勝った29日の夜、スターダムのビッグマッチでは“赤いベルト”ワールド・オブ・スターダム王者の朱里が、次期挑戦者に世羅を指名した。そういうレベルの相手を“食った”のである、クイーンは。
「○○に勝った」、「あの選手とは○勝×敗」という結果を背負いながら、プロレスラーはキャリアを重ねていく。この日も、試合を終えたクイーンは無言で控室へと引き上げていった。その姿を追いながら前に回って撮影しようとしたのだが、少し考えて背中を撮ることにした。彼女が背負う“結果”は大きく、重いからだ。
その大きさ、重さをストーリーに結びつけられたら、これからのタイガー・クイーンはさらに面白くなる。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。