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《体操女子五輪代表21歳の引退》コーチの母に「やめたい」と漏らした手のしびれ… “涙の1分半”を終えた畠田瞳が明かす次の夢 

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長谷部良太

長谷部良太Ryota Hasebe

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photograph byYUTAKA/AFLO SPORT

posted2022/05/12 06:00

《体操女子五輪代表21歳の引退》コーチの母に「やめたい」と漏らした手のしびれ… “涙の1分半”を終えた畠田瞳が明かす次の夢<Number Web> photograph by YUTAKA/AFLO SPORT

21歳の畠田瞳は体操全日本選手権・個人総合での最後の演技で涙した

「こんなこともできないなら、この先、東京オリンピックの時の難しい演技構成に戻すことはできないな、と感じた」

 その1週間ほど前から、痛みもないのに練習中に急に涙が出たり、しんどさを感じることが増えていた。苦しみが募る中、一つの失敗が「最後の一押し」になり、引退を決意させた。

コーチの母が「持って生まれた素質は高くない」と話すワケ

 体操一家に生まれた。父の好章さんは1992年バルセロナ五輪団体銅メダリストで、93年、95年の全日本選手権個人総合王者。日体大のコーチとして内村航平を指導したこともある。友紀子さんはユニバーシアード大会の元日本代表。4歳下の妹、千愛も日本トップレベルで活躍している。

 姉は自他ともに認める「努力型」。その能力や性格を知り尽くす友紀子さんは、少し辛口に娘を評する。

「持って生まれた素質は高くない。運動神経が悪いと言ったら失礼かもしれないけど、普通の子なら(落下しても)クルッとして普通に落ちるところで大けがをしてしまう。本当に要領も悪いし、動物的感覚は人よりも低い」

 だけど、と続ける。

「小さな頃から、やらないといけないことをさぼった姿を見たことがない。要領が悪いから、練習する。彼女は本当に、努力を長く続ける才能がすごく高い選手だと感じる。誰も見ていなくても、繰り返し練習できる」

 4月20日。引退の舞台に選んだ全日本個人総合選手権予選を翌日に控えた記者会見で、同じく引退を決めていたベテランの寺本明日香も、友紀子さんと似たような印象を口にした。

「瞳は本当に努力家で、絶対にさぼらない。それをずっと私は見てきた」

手にしびれが残る中、最後の1分半の演技

 引退を決めて以降はけがをしないことを最優先し、母とも相談した上でゆか1種目に絞って練習した。

 迎えた4月21日の予選。畠田は昨年の東京五輪や世界選手権よりも技の難度を落として臨んだ。跳躍技で着地のミスはあったものの、精いっぱいの演技を披露。

「今まで応援してくれた方々に、恩返ししたい。一番は家族に感謝の気持ちを込めたい」

 まだ手にしびれが残る中、強い思いを最後の1分半に詰め込んだ。

【次ページ】 「母の指導法は自分に合っていたし……」

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