甲子園の風BACK NUMBER
“新潟の186cm右腕”にスカウト集結…日本文理・田中晴也がドラフトの主役に? 投球姿に宿る“佐々木朗希の脱力感”
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph byTakahiro Kikuchi
posted2022/05/12 11:00
評価がぐんぐん上がりそうな右投手が新潟にいる。田中晴也(日本文理)。186センチ92キロの体躯から快速球を投げ込む本格派だ
「エンジンの強さはOBの飯塚悟史(現DeNA)のほうが上でしょうけど、柔らかさは田中のほうが上でしょう」
田中にとって“ぶっつけ本番”の試合だった
いざ試合が始まると、田中は力感のないフォームで好球質のボールを繰り出した。回転音まで聞こえそうなストレートは、捕手のミットを突き上げるようなキレを感じさせた。速球派投手にありがちな体の力みが、あまり感じられない。田中本人によると、出力については「メリハリをつけるようにしている」という。
「(力を)入れるところは入れて、効率のいい入れどころを考えています」
だが、相手の新発田中央打線も相当に田中対策を練ってきたのだろう。田中の快速球に食らいつき、簡単にはアウトにならない。また、リラックスして投げているように見えた田中の内面にも「硬さがあった」という。
「紅白戦をやったり、ブルペンでバッターを立たせて投げたりと工夫はしてきましたが、やっぱり前半は大会特有の雰囲気がありました。実戦不足の影響がないと言ったらウソになります」
実は日本文理は部内不祥事があり、4月25日まで対外試合禁止処分を受けていた。練習時間も3時間と制限されたため、紅白戦ができたといっても、わずか4試合。田中の最長イニングは5回で、対外試合としては「ぶっつけ本番」だったのだ。
アピールポイントは球速以上に…
3対0とリードして迎えた4回表、三塁ベースに当たる不運な安打とエラーで1死二、三塁のピンチを作ると、田中は新発田中央の4番・前田優弥にショート右への痛烈な打球を浴びた。日本文理のショート・平田来輝が横っ飛びで好捕してアウトにしたものの、1点を失った。
とはいえ、危ないシーンはそれくらい。田中は7回を投げて被安打4、奪三振6、与四死球0、失点1(自責点0)の内容。打者としては警戒されて2四球も、2打数1安打と一定の結果を残した。チームは8対1(7回コールド)で勝利している。
日本文理の鈴木崇監督は、田中を「チームの精神的支柱として、今ある力を堂々と出し切ってくれた」と称えた。その言葉からは、今後実戦登板を重ねていけば、さらに一皮むけるはずという自信も感じられた。