じわっとペースを落とし…横山和生の巧みな騎乗

　2つ目の勝負の分かれ目は、ここからだ。

　同じペースでついてきた馬が最後にバテてしまうようなラップを踏み、上手く単騎逃げに持ち込んでいた横山が、ここからじわっとペースを落としたのだ。

「タイトルホルダーが自分でわかっていて、息を入れたいタイミングで、入れることができました」と横山。

　後続を引きつけて1、2コーナーを回り、向正面で、2番手との差は1馬身から1馬身半ほどになっていた。2000m通過は2分3秒6。つまり、最初の1000mからここまでを、タイトルホルダーは1分3秒1という、ゆったりしたペースで走ったのだ。

　このレースを最初の1000m、1000mから2000mまで、2000mからゴールまでの3つのパートに分けて考えると、2つ目のパートで最も楽に走ることができたのは、間違いなくタイトルホルダーだった。

　2周目、内回りの3、4コーナーを回り、最後の直線へ。タイトルホルダーの真後ろには、スタート直後に落馬してカラ馬となったシルヴァーソニックがいる。逃げ馬をマークする側にとってはペストポジションとも言えるここにカラ馬がいたことは、他馬にとって痛かっただろう。

「タイトルホルダーの力を信じて」

　横山の左ステッキを受けたタイトルホルダーが豪快に末脚を伸ばす。

　テーオーロイヤル、ディープボンドらが追いすがる。が、差は縮まるどころか、どんどん開いていく。

　ラスト200m地点で横山が鞭を右手に持ち替えて追いつづける。

　勝負は決した。

　タイトルホルダーが、2着のディープボンドを7馬身突き放し、先頭でゴールを駆け抜けた。勝ちタイムは3分16秒2。上がり3ハロン36秒4はメンバー最速で、2番目のヒートオンビート（4着）よりコンマ6秒も速かった。横山の巧みなペース配分で、逃げながら脚を溜めたことが爆発力につながった。

見事なペース配分でタイトルホルダーを導いた横山和生はGI初制覇となった　©Photostud

「タイトルホルダーの力を信じて、ぼくが邪魔しないようにと思いながら乗りました。タイトルホルダーとGIを勝てたことが嬉しかったです」

　そう話した横山は、祖父・富雄、父・典弘につづく同レース史上初となる親子3代制覇をなし遂げた。祖父は1971年にメジロムサシ、父は96年にサクラローレル、2004年にイングランディーレ、15年にゴールドシップで天皇賞・春を制している。

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