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《天皇賞・春》タイトルホルダー圧勝劇の裏にあった“2つの勝負の分かれ目”とは? 凱旋門賞出走なら「欧州勢は手の施しようがないのでは」
posted2022/05/02 12:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Photostud
長距離では恐ろしく強い。これなら凱旋門賞でも夢を見られるのではないかと思うほどの圧勝劇だった。
伝統の一戦、第165回天皇賞・春(5月1日、阪神芝外回り→内回り3200m、4歳以上GI)で、横山和生が騎乗した2番人気のタイトルホルダー(牡4歳、父ドゥラメンテ、美浦・栗田徹厩舎)が7馬身差で優勝。馬にとっては昨年の菊花賞以来の2度目、騎手にとっては初めてのGI勝ちとなった。
1番人気に支持されたディープボンドは2着に敗れた。今年行われたGI6戦で1番人気は全敗。昨年のホープフルステークスから数えると、GIでの1番人気は7連敗となった。
勝負の分かれ目は2つあった。
勝負を分けた「最初の10秒」
1つ目は、ゲートが開いてから、タイトルホルダーがハナを取り切るまでだった。
16番という外枠から、横山が積極的に押して促したことで、タイトルホルダーはゲートから10完歩ほどで他馬より体ひとつ抜け出した。さらに追っつけながら内に切れ込み、もう10数完歩進んだところで、内埒から2頭ぶんほどの、理想的な位置を取り切った。
ゲートから1ハロン弱。時間にすると10秒もなかった。
「しっかり出して行っても、折り合いに不安はありませんでした」
横山がそう振り返ったように、あれだけ強く促された直後なのに、「定位置」というべきハナを取り切ると、タイトルホルダーはそれ以上前に行こうとはせず、すっと折り合った。
しかし、折り合ったのは、横山がつくった流れが速いからでもあった。1周目の3、4コーナーで、馬群は15馬身ほどの縦長になり、どの馬も掛かっていなかった。
最初の1000m通過は1分0秒5。3200mという距離と、使い込まれたうえ、雨水を含んで稍重のコンディションとなっていた馬場状態を考えると、淀みのないペースだ。
単騎で逃げるタイトルホルダーは、2番手に6馬身ほどの差をつけて、正面スタンド前を通過した。