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ドラ1コンビ「鍬原→大勢」の“新・勝利の方程式”だけじゃない! 巨人の好調を支える“2人の男”とは…試合の流れを作り、近大マグロの差し入れも
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/04/16 11:03
ルーキーにして巨人のクローザーを務める大勢。鍬原からの“勝利の方程式”が確立された
“便利屋”ではなく大事な役割を託すことを決断
「初めてじゃないかな。気のいい男なんだけど、どこかマイペースだからね、畠は。その彼がチームにあんな差し入れをしようと考えたのは……。まあ畠もね、少しずつ成長しているし、周囲への気遣いとかそういうこともできるようになってきている」
そういう行動一つからも、原監督は畠の変化を感じ取っている。だから昨シーズンまでの先発もあり、リリーフもこなしてもらうという、よく言えばユーティリティー的な、あるいは便利屋的な起用ではなく、きちっと自覚させてチームの中で大事な役割を託そうと決断した訳である。
結果的に畠のセットアッパーはうまく機能せずに、そこに鍬原が現れて役割は入れ替わった。それでも畠は3連投はさせないというルールのある大勢の代わりに、クローザーとして最後を締めくくることもするし、中継ぎとしてチームを底支えする役割も与えられてリリーバーとして機能している。
これは中継ぎでの起用が続いている今村にも同じことが言える。
昨年までも先発での起用が中心とはいえ、ローテーションの谷間だったり、誰か故障者がでたときに、チーム事情優先でその穴埋めに回ることが多かった。しかし今季は今村という投手の特性を活かして、最も活躍できる中継ぎという場所を与えられている。一軍で通用するボールを持っているものの、それをなかなか持続できない。それならば集中のスパンが短い場所に配転してその才を活かす。その結果が2人の中継ぎとしての起用だった。
巨人の今季の好調の隠れた秘密
もちろんこうした配転の背景には、赤星優志投手や山崎伊織投手、堀田賢慎投手、またマット・シューメイカー投手に、現在は夫人の出産に立ち会うために一時帰国中のマット・アンドリース投手ら先発陣の駒が揃ってきているという戦力事情があることはいうまでもない。
ただ結果的には2人が中継ぎに控えていることで、若い先発陣も球数を管理しながら、マウンドに上げることができるし、鍬原と大勢の“新・勝利の方程式”も生きてくる。
実はそこに巨人の今季の好調の隠れた秘密があるわけだ。
16日の阪神戦ではまさに勝てるかもしれない1点を追う8回に畠がマウンドに送り出されたが、ロハス・ジュニアに2ランを浴びてリリーフに失敗、勝利に結びつけることはできなかった。ただそれはこういう数多く登板するリリーフ投手の宿命であり、問題はその失敗を引きずらずに、すぐにやってくる次の登板でどう切り替えてマウンドに上がれるか。シーズンはその繰り返しである。
「優勝するためにはどんな場面でも『行ってくれ!』と言ったら『分かりました!』とマウンドに上がって、涼しい顔をして抑えてくる中継ぎ投手が絶対に必要や」
こう語っていたのは中日、阪神、楽天で優勝を経験した星野仙一監督だった。
16日時点で今季の畠は10試合に登板して1勝1セーブ4ホールド。今村も同じく開幕から7試合に登板して6ホールドを記録している。
優勝に向けて不可欠なピースが、2枚、巨人には揃っているということだ。
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