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<三浦知良と香川真司の往復書簡> 香川選手との初対戦に秘められた不思議な縁。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byMegumi Seki
posted2011/02/03 06:00
今回の差出人
香川真司
1989年、兵庫県生まれ。'06年C大阪に入団。'09年にJ2得点王となり、'10年にブンデスリーガ、ドルトムントへ。リーグ前半戦は全試合先発し8ゴール。アジア杯2011では日本代表の10番をつけ、準決勝の韓国戦まで全試合に先発出場。チームを決勝に導いたが、韓国戦後に右足小指付け根の骨折が発覚、今季の復帰は絶望的とみられている。
親愛なるカズさんへ
カズさん、お元気ですか。
僕は今、ドイツのドルトムントに移籍して、ようやく半年が過ぎようとしています。チームはブンデスリーガで首位を独走していますし、ここまでは何とかいいリズムでプレーできています。
僕が、カズさんのことを初めて認識したのは、小学校1年生のころでした。特にカズダンスにはものすごく影響を受けた記憶があります。あと、シザースのフェイントもよく真似をしていましたね。その2つはカズさんの十八番ですから、特に印象に残っています。
実を言うと、僕はカズさんと小学校1年生の時に会っているんですよ。阪神大震災の後、カズさんが僕の通っていた小学校に来てくれたんです。
サングラスをかけて、スーツをビシッと着て、でも胸元はあけていて(笑)。子供ながらに、ああ格好いいなあ、Jリーガーになりたいなあと思ったのを覚えています。その時は、一緒にサッカーをしたわけではないのですが、話をしてくれたり、一緒に写真を撮ってもらったりしました。
しかも、抽選でサイン入りカズバッグが当たったんです! すごく嬉しくて、それが、今でも強烈な思い出となっています。
カズとの初対戦、ハーフタイムのユニフォーム“交換”。
そんなカズさんと、まさか同じピッチで試合ができるとは……。
その日は、忘れもしない、2008年4月26日のセレッソ大阪対横浜FC戦。
ハーフタイムに、カズさんが近寄ってきたかと思うと、ユニフォームを脱いで僕に渡してくれた。
僕がカズさんのユニフォームをほしがっていることを事前に新聞報道等で知っていたのかもしれませんが、Jリーグでは、ユニフォーム交換自体があまりないことだし、ましてや前半終了直後の出来事だっただけに、本当にビックリしました。
「おう、ユニフォームあげるよ」
「あっ、ありがとうございます!」
確か、こんな感じでしたね(笑)。
普通なら僕もユニフォームを脱いで交換するのがマナーなのかもしれませんが、その時はただただ驚くばかりでしたし、逆にカズさんの存在が大きすぎて僕のユニフォームをあげるのも失礼かなと思いまして。もちろん、いただいたユニフォームは大事に家に飾ってあります。
それにしても、小学生の時に憧れていたカズさんが、今も現役でバリバリやっているというのは、本当に凄いことです。僕は今、21歳ですが、この先10年後、20年後も同じように現役選手でいられるのか、今と同じ気持ちでプレーできるのか、というのは、正直想像ができません。
僕自身は、外国人助っ人としてドルトムントに来ているわけですから、毎試合毎試合、結果を残していかなければならないというプレッシャーがあります。それだけに試合を終えた後は、2、3日ポカーッとしていることもあるし、試合の間隔があいたときは、逆にモチベーションの上げていき方が難しかったり……。
普段の生活とのリズムをうまく保って、常に試合に挑む精神状態をマックスに持っていくというのは簡単なことではないですね。