濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
試合後“初肉声”は「悔しい」 タイガー・クイーンが6連勝も“必殺技なし”の大苦戦…好敵手たちとの“再戦”が今後のカギに?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/03/30 17:00
3月17日の後楽園大会で高瀬みゆきと対戦し、デビューからシングル戦6連勝となったタイガー・クイーン
出なかった“必殺技”
この試合、勝ったのはクイーンだったが観客の印象に残ったのは高瀬のほうだったのではないか。それくらい、高瀬が攻撃している場面が目立ったのだ。高瀬は高瀬で、クイーンをライバル視していたのかもしれない。
ゴング前、背後からドロップキックの奇襲。場外では空中殺法を阻止してブレーンバスターでフロアに叩きつける。その後も常に先手を取るのは高瀬。ラリアットにカミカゼ、エルボーの打ち合いと、体は大きくないがパワフルで気合いが伝わる試合ぶりを見せた。“女優によるプロレス”を標榜する団体で生まれ、偏見もありながら他団体で実力を認めさせてきたのが高瀬だ。同じことを“佐山聡のリング”でも、タイガー・クイーンが相手でもしっかり実行したのである。
変形のSTFなど反撃を見せるクイーン。しかしペースを奪うまでには至らない。最後はフライング・ニールキックで勝利したが、本人にとっては満足のいく内容ではなかった。フィニッシュは、タイガースープレックスやタイガースープレックス2021といった“必殺技”で決める余裕がなかったようにも見えた。
試合後のインタビューで“初めて”語ったこととは?
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ただ、今のタイガー・クイーンは“変化”を志向しているのも確かだ。大会に向けた記者会見ではジャガーにうながされ「頑張ります」とコメント。その一言だけではあったが、これまでは“謎の覆面レスラー”として無言を貫いてきたから“初コメント”は話題になった。頑張りますとコメントしたことが見出しになるレスラーは他にいないだろう。
試合を終えると、そのまま会場を後にするのがいつものパターンだったが、この日はインタビュースペースへ。やはりジャガーが記者からの質問を一つだけ許可する。試合の感想を聞かれると、クイーンはうなだれたままこう言った。
「勝てたけど……悔しいです」
デビューからシングル6連勝。だが、どの試合の勝利も苦しみながら掴んだものだった。“初の試合後コメント”は、そのことを象徴していたと言ってもいい。