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プロ野球PRESSBACK NUMBER
データ偏重にレジェンド鳥谷敬が抱く“大きな不安”…「全てが予想できてしまうかもしれない」「選手の成長を妨げている部分も」《新たなDH制も提言》
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byWataru Sato
posted2022/03/30 11:02
虎のレジェンド・鳥谷敬氏に、DH制の是非やデータ偏重への“懸念”を語ってもらった
「変化、という点で最も印象深かったのは、ボールの問題です。2011年から(低反発球に)変わったんですが、ボールの重さというか打感の違いをかなり感じました。縫い目が大きくなったので甲子園では風の影響も受けやすいんですよ。自分の中で捉えたという感覚でも入らない。実際、前の年に19本だったホームランは5本になりました。ボールひとつ、それも反発係数を変えただけでこんなに変わるのかと驚きましたね」
データ偏重に思う“一抹の不安”
18年間では「データ」の重要度も格段に変化した。トラックマンやスタットキャストがメジャーから上陸。鳥谷氏は、その効果を実感しつつも、一抹の不安を感じているという。
「自分がプロに入ったときは資料がプリントされて置いてある、という感じでしたが、だんだん映像をiPadで見るようになり、徐々に打撃も守備も数値化されるようになった。辞める頃には、守備位置やバットの角度までこれが正解、というような確率が出て、指定されるほどになっていました。自分はその“道中”をやってきたので、少し寂しさもある。
例えばショートの守備位置でいえば、この打者は普段ならこっちに守る方がいいけど、今日のピッチャーに対する振りを見たらどこか体がおかしいのかな? と思って逆を守ったり。まず自分で考えて、さらにそれが当たった、外れたという経験を自分の中に蓄積して次の判断材料にしていました。今は自分で考えるより先に指示を受け、外れてもデータと違うな、で終わり。その判断材料を自分で考えながら学んでいくのか、先に知ることがいいのか……。正解はないですが、少なくとも自らの経験を元に判断できる選手のほうが、想定外のケースにも動じずに対応できるのかなと。データがありすぎて選手の成長を妨げている部分もあるのではないかと思いますね」
「これからの野球は大丈夫かな、と」
危惧するのは、胸高鳴るワクワク感を生み出す「意外性」の喪失だ。