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朱里とジュリア、“赤いベルト”戦を前にタッグ解散…スターダムを大きく変える「容赦なし」の対決とドンナ・デル・モンド結成秘話
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/03/25 17:03
3.13後楽園ホール大会、タッグマッチの前哨戦で引き分けとなった朱里とジュリア。両国大会で2人を待ち受ける運命は…
ジュリアが明かした思い「私としてもやりづらい」
「憎み合って離れるわけじゃなくて。これで容赦なくベルトを奪いにいける。赤いベルトはスターダムで一番価値のあるもの。ユニットのリーダーという存在価値を超えている。だからユニットリーダーのジュリアの隣に赤いベルトのチャンピオンが立っているというのは、私としてもやりづらい。朱里も、ジュリアを支える役目から次のステップに進むために、ジュリアと離れなければならないと思うし。それは私も同じ」
DDMは全員が他団体からの“移籍組”だ。だからこそなのか、結束が強くプライベートでも仲がいいという。練習が終わるとみんなで食事に行き、そこでもひたすらプロレスの話をする。ただ、組んでいるから仲がいいのであって、仲がいいから組むようになったというわけではなさそうだ。
朱里が明かす“ジュリアからDDMに誘われた日”
今月、朱里が上梓した自伝『朱里。プロレス、キック、総合格闘技の頂点を見た者』によると、DDM結成はジュリアに誘われてのこと。スターダムへのレギュラー参戦が決まった時に、それを聞いたジュリアが「ぜひ私と一緒に」と声をかけた。それまでは特に大きな接点はなかったそうだ。
〈彼女がアイスリボンの所属だった時に私も参戦していて、たぶん若手興行の「P's Party」だったと思うんですけど、そこで顔を合わせたのかな。ケガをしていたのか痛そうな顔をしていたので「大丈夫?」と話しかけた記憶があります。でも、会話をしたのはその時くらいだったかな。
だから、それまでは特別仲が良かったとかタッグを組んでいたとかではないんです。でもジュリアは私とユニットを組みたいと言ってくれた。以前から力を認めてくれていたのかな……そうだったら嬉しいですね〉
“並び立つ”ことは不可能だった…
同書には、朱里がジュリアの魅力について語っている箇所もある。
〈ジュリアはプロレスのことを凄く考えている人。そして、自分のことを客観的に見ることができる人だなと思います。だからこそ、お客さんに対しての自分の見せ方もうまいですよね。プロレスにおける「魅せる」部分が凄く秀でている。本人がどう思っているかは分からないんですけど、試合をしていると自然にジュリアに目が行くんですよね〉
〈刺激になるパートナーですし、言葉のチョイスも素晴らしい。ジュリアを見ているとこっちも勉強になりますし、リスペクトしています〉
感情でもたれ合うのではなく、実力で結びついた関係性。プロフェッショナル同士だから組んで、必要であれば決別も厭わない。それがDDM、アリカバということだ。ジュリアは朱里のことを「スターダムの守護神」だと言う。それだけ大きな存在だから、中途半端な気持ちと立ち位置で闘うわけにはいかない。朱里とジュリアが団体トップの座をかけて闘うのであれば“並び立つ”ことは不可能。それが当然の帰結だった。
これからのために、2人は離れた。となれば“同門対決”とは比べ物にならないくらい、試合の結果は重いものになる。朱里はジュリアと岩谷に連勝して「伝説を作る」と言う。ジュリアが勝てば赤いベルト初戴冠。そしてどちらが勝つにしても、その後のスターダムの風景は大きく変わることになる。
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