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「あんなにいい人いないよ。ただ…」引退の危機を乗り越えたジュリアが語るスターダム王者・朱里への“ジェラシー”《特別グラビア》

posted2022/03/25 17:04

 
「あんなにいい人いないよ。ただ…」引退の危機を乗り越えたジュリアが語るスターダム王者・朱里への“ジェラシー”《特別グラビア》<Number Web> photograph by Essei Hara

3月26日の両国国技館で、同じDDMに所属する朱里との“同門対決”に臨むジュリア。赤いベルトをかけた決戦を前に、思いの丈を語った

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原悦生

原悦生Essei Hara

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Essei Hara

 女子プロレス団体・スターダムの“お騒がせ女”ジュリアは、昨年9月から約4カ月、首の治療のためにリングから遠ざかった。

 異変に気付いたのは9月4日、5日、6日と続く3連戦の前だった。新日本プロレスの西武ドーム大会を挟んで、スターダムの『5★STAR GP』の開催中だった。

「痛みが出たのは朝、起きたら突然で。それまで試合でも動けてたし、大したことないと思っていた。首について、そこまでつらいと感じたことはなかった。でも、痛み止めの注射を2本打ってもらっても5分も持たなくて、痛くて試合どころか、ひとりで横になることすらできない状態。しばらくは家族や友だちに家に来てもらってた。ご飯もよく噛めなくて……」

 ジュリアはしみじみとその時を思い出していた。想像を絶する痛みと苦しみを忘れることは決してないだろう。

「少なからず、引退も頭をよぎった。病院で先生の話を聞くと、この首の症状はプロレスラーに多いと。ただ、私よりひどい症状のレスラーでもそこから回復して、現役をバリバリ続けている人もたくさんいると言われて、希望が持てましたね」

 放っておいたら半身不随や生命の危険もあったという。「忘れられてしまうのではないか」という不安よりも、命があることに幸せを感じていた。

「今だから言える。生きていられてよかった」

 首の痛みが出なかったなら、ジュリアは『5★STAR GP』で優勝できていたかもしれない。赤いベルトへの挑戦のチャンスも、もっと早い時期にあったかもしれない。もし欠場していなかったら、違う展開になっていただろうことは間違いなかった。

朱里への感情は「ただのジェラシーじゃない」

 3月26日、ジュリアは両国国技館で朱里と戦う。待ちわびた赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)への挑戦だ。同じDDM(ドンナ・デル・モンド)内で争う、このタイミングでの一騎打ち。「その時は必ず来る。遅かれ早かれ、朱里と向き合う日が来る」とジュリアは思っていた。

「嬉しさもあるよ。朱里は私にとって本当に大きな存在。他の何にも代えられない。朱里と舞華、この2人がいたから今のDDMがあるわけだし、みんなで支え合って成長する事ができた。朱里は実績もキャリアもあるし、いつかはユニットリーダーをやるべき人間だよね」

 ジュリアと朱里は、イタリア語とタガログ語を組み合わせた造語で、“モノが違う狂気”を意味する「アルト・リヴェッロ・カバリワン(通称アリカバ)」という名のタッグチームも組んだ。朱里は『5★STAR GP』で優勝して、昨年末には(林下)詩美から赤いベルトも奪った。ジュリアは考えた。

「現状維持がダメなわけではないけれど、このままではいられない。朱里もそう思っているでしょう。ジェラシーとか嫉妬? ある意味そうかもしれない。でも、ただのジェラシーじゃない」

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