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「私たちはさ、消費されることにものすごく敏感だよね」ジェーン・スーと青木真也はなぜ“ロイホの3時間”を大事にするのか?

posted2022/03/25 17:00

 
「私たちはさ、消費されることにものすごく敏感だよね」ジェーン・スーと青木真也はなぜ“ロイホの3時間”を大事にするのか?<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

お互いに“ソウルメイト”と認め合うジェーン・スー(48)と青木真也(38)の特別対談

text by

曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

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Yuki Suenaga

コラムニストやラジオパーソナリティ、作詞家とマルチに活躍し、2021年12月にエッセイ集『ひとまず上出来』(文藝春秋)を上梓したジェーン・スーさん。そんなスーさんが格闘技観戦に熱中するきっかけになったのが、MMAファイターとして唯一無二の存在感を放つ青木真也選手です。

TBSラジオの「昼の顔」としてもおなじみのスーさんと、3月26日の『ONE X』で秋山成勲選手と対戦する青木選手の意外な共通点とは……? お互いをソウルメイトと認め合うふたりの対談をお届けします(全2回の1回目/後編を読む)。

――おふたりがお互いのことを認知したのはいつごろだったのでしょうか?

ジェーン・スー(以下、スー) 2008年ごろから女子キックボクシングの佐々木仁子選手を応援しにKrushなんかを観に行っていたら、友達から「総合も観に行こうよ」と誘われて生でDREAMに行ったのが2009年。それまでPRIDEも年末のテレビでしか見てなかったし、当時は立ち技とMMAの区別もつかなかったんですけど、筋肉隆々で色黒というイメージ通りの格闘家たちのなかに、真っ白でスレンダーな体にカラフルなロングスパッツの人が出てきて。しかもやたら強いし、「この人、絶対面白い」と確信して、それからずっと青木真也を追っているという感じですね。

青木真也(以下、青木) 僕の方は、SNSで初めてスーちゃんに絡んだのが2011、12年くらいだったかな? こんな大御所になる前ですよ。

スー 全然、いまも大御所でもないですけど。

青木 本も出していなかったし。

スー そうね、週に1回TBSラジオに出るくらいで。よく私のこと見てたなと思う。

青木 「ブログが面白いおばさんだ」って。僕、ネットの文章好きなんです。でも、スーちゃんは僕が好むような“突飛なことを書く人”ではなかったんですよ。特別なにかが深く刺さったというわけじゃないんですけど、実際に喋るとラグがないな、と。格闘技の業界だと、話をリードしてもらえることもなかなかないので、第一印象から「ああ、助かったな」みたいな感じがありましたね。

「複雑なものを読み解く人」「ありのままをさらけ出している」

――最初から相性が良いというか、お話が淀みなく流れるような。

青木 そうなんですよ。複雑なものを読み解くのが好きな人だから、格闘技やプロレスの文脈もパパッとわかってくれますし。

スー たしかに、「目に見えないなにかがそこにあるはず」を読み解くのは好きなんだと思います。なぜこのロングスパッツの人はこんなに強くて、たくさんの人間の感情をかき乱すのか、とかね(笑)。

青木 たぶんあの当時もいまも、リングやケージのなかに自分の感情だったり日常だったりをすべて持ち込むという芸風の人がいないんですよ。僕は格闘技をスポーツではなく“芸事”だと捉えているんですけど、舞台上でなにを出しても恥ずかしくないと思えるのが芸事には大切じゃないですか。

スー だから見ていて面白かったんでしょうね。もちろん強いんですけど、私が青木さんに夢中になった肝はそこじゃない。みんなから愛される選手になって、清く正しい行いをして勝っていくことを善とする価値観ではなく、ありのままをさらけ出している青木真也だから興味を持ったんです。

【次ページ】 「当時は今よりも青木真也を嫌いな人が多かった」

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