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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井岡一翔32歳のキューバ人トレーナーを直撃「井上尚弥28歳vs井岡、ドリームカードは実現する?」「決まればイオカを必ず勝たせますよ」
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph byGetty Images
posted2022/03/18 11:00
1月半ばに可能性が報じられた井岡一翔(32歳)vs井上尚弥(28歳)。井岡のキューバ人トレーナー・サラスはこの“ドリームカード”をどう見ているのだろうか
「井上のパワーに対抗するために、井岡は技術を駆使する必要があります。ウガスがパッキャオを引退に追い込んだように、弱点を突きますよ。井上の攻撃力に関しては文句の付けようがありませんが、ノニト・ドネア戦を見る限り、ディフェンスに問題があるように感じます。パンチがあるだけに、ガードが下がる傾向がある。
井上のブラインドとなる角度を見つけ、そこを徹底的に狙う作戦を立てます。もちろん、試合前から戦略を練りますが、実際に戦いながら、死角を探っていくでしょうね。死角を見付けることこそ、私の役目です。井岡には井上以上の経験がありますから、その点を伸ばしながらトレーニングします。相手の動きを見て、臨機応変に戦える選手というのは、自分よりパワーのある選手を打ち負かせるものです」
「私は選手の衰えを感じたら引退を勧めます」
サラスはラテン人らしく、笑顔を絶やさない。ウガスをはじめとした一人一人の選手に温かい眼差しを送り、励ましながら指導する。
「ボクシングは攻撃、守備、そしてカウンターアタックの3要素が大事です。例えば、相手のストレートをブロックしたとします。でも、直後に同じパンチを喰う可能性もありますよね。ボクシングは瞬間、瞬間で状況が変化していきますから、それを見越して戦い方をクリエイトしなければならない。
パンチを打つこと、相手の攻撃を躱すこと、体を動かしながら相手との駆け引きをすること。それらの精度を磨き抜いて自分のスタイルを完成させていくんです」
私が取材に訪れた日、待ち合わせ時刻にジムの扉を開けると、サラスはUSBAミドル級タイトルを失い、このところ負けが込んできた選手を指導中であった。
身長164センチのサラスが、ミドル級選手のパンチをミットで受けるための策として、12センチのソールを貼り付けた特別シューズを履いていた。
「打ったら直ぐに動きなさい。いつもディフェンスの意識を忘れてはいけない。パンチを出し、ヘッドスリップ。またパンチを出したら、頭の位置を変える。上体を揺らすことを止めるな」
という言葉を掛け続けた。
ミドル級ファイターとのミット打ちが終わる頃、ウガスがジムにやって来た。握手し、肩を叩き合って挨拶を済ませると、サラスは片目を瞑りながら言った。
「ミドル級のボーイは、まだまだ大丈夫。私は選手の衰えを感じたら引退を勧めます。脳からの指令が伝わっているか否かは、膝の動きで分かるんですよ」
ウガスにも、ディフェンスを重視したミット打ちのメニューを与えた。この取材の3日後、ヨルデニス・ウガスとエロール・スペンス・ジュニアのWBA/WBC/IBF統一ウエルター級タイトルマッチが、4月16日開催されることが正式に発表された。
キューバ人コンビは更なるビッグステージで、いかなる仕事をやってのけるか。注目の一戦だ。
<後編へ続く>
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