濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
なつぽいが目指す「スターダムの絶対的ヒロイン」 上谷沙弥との王座戦は“新”ライバルストーリーへ…復帰のKAIRIとの関係は?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/02/27 11:02
2月23日、ワンダー・オブ・スターダム王座をかけて対戦したなつぽい(挑戦者)とチャンピオン上谷沙弥
“白いベルト”ことワンダー王座には、昨年4月にも挑戦している。当時のチャンピオン、中野たむに泣きながらビンタを連発する場面が印象的だった。なつぽいとたむは、ともに元アクトレスガールズ。団体を離れ、また同じリングに上がることになり、ベルトをかけて闘う。その軌跡そのものにドラマ性があった。
「たむちゃんに挑戦した時は、ドロドロした感情をぶつけ合う試合でしたね。“昼ドラ”とか言う人もいて。だから今回は全然違う感覚です」
試合を控えるなつぽいにインタビューすると、そう答えてくれた。
「上谷沙弥ちゃんとの関係性は“無”に近いので。これまでそんなに絡んでこなかった。でもプロレスラーは誰が相手でもいい試合をしなくちゃいけない。関係性がないならないで、そこから何を作るかがポイントになると思います」
試合に向けた調印式では「ロシアンわさびシュークリーム対決」を自分で持ち込んだ。2人ともわさび入りが当たって悶絶する。明るく、笑える調印式。口汚く罵ったり乱闘を仕掛けて“因縁”を煽るつもりは2人ともなかった。元から因縁などないのだ。無理やり“ケンカ”のムードを作っても、ファンには見透かされるだけだろう。むしろ涙目になりながら「全然辛くないです!」と言い張る上谷の姿に感じるものがあったとなつぽいは言う。
「普段はぽけーっとしてるけど、相当な負けず嫌いですよね。アイドルだったからかもしれない。試合でも、自然と気持ちのぶつかり合いになるんじゃないかな。たむちゃんとの試合は胃が痛くなるくらいドロドロしてましたけど、上谷沙弥ちゃんとは清々しい気持ちで闘えそうです」
上谷vsなつぽいは必殺技の応酬に
因縁なきタイトルマッチは、しかし純粋に試合内容で観客を魅了した。身体能力の高さと負けん気の真っ向勝負だ。
なつぽいはエプロン(リング内のマット部分より硬い)でジャーマン・スープレックス。コーナーからも“ぽい捨て”ジャーマンを狙ったが、上谷はバク宙で着地してみせた。さらにドロップキックを飛び上がってかわし、そのままフットスタンプ。ジャンピング・バックスピンキックは見事に頭部を直撃する。
なつぽいはフェアリアル・ギフト、フェアリー・ブリンクと必殺技を決めるが、上谷はカウント2で返す。フィニッシュは上谷の代名詞フェニックス・スプラッシュだった。ベルトを獲ったたむ戦、ウナギ・サヤカとの初防衛戦とタイトル戦3試合連続での“不死鳥の舞”。なつぽいは最上級の決め技を出すにふさわしい相手だった。
この長岡大会では“赤いベルト”ワールド・オブ・スターダムのタイトルマッチが組まれておらず、上谷vs.なつぽいがファン投票でメインに選ばれた。結果として、観客と生中継の視聴者を満足させる闘いになったのは間違いない。いわゆる五大都市以外の会場でも、ここまでスケール感のあるビッグマッチができるのが今のスターダム の“強さ”だ。
中野たむは、白いベルトを愛憎渦巻く“呪いのベルト”と呼んだ。上谷はそれを“全力のベルト”にすると宣言している。ウナギ戦もなつぽい戦もまさに全力で、試合のたびにベルトが“上谷色”になっていくのが分かる。