摂食障害、2度の五輪…鈴木明子36歳が語る“遅咲きのスケーターと呼ばれた現役時代”「『自分を大切にする』と『競技性』は相性が悪い」（小泉なつみ）

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摂食障害、2度の五輪…鈴木明子36歳が語る“遅咲きのスケーターと呼ばれた現役時代”「『自分を大切にする』と『競技性』は相性が悪い」

text by

小泉なつみNatsumi Koizumi

photograph byAtsushi Hashimoto

posted2022/02/15 11:03

ソチ、バンクーバーの2大会に出場している元フィギュアスケーターの鈴木明子さん

鈴木　それが一度もないんですよね。本当にスケートが好きなんだと思います。今思い返しても、選手生活って苦しかった記憶が9割9分なんですけど（笑）。

――練習行くのにも足が重い、みたいな感じですか。

鈴木　「いぇ～い♪今日もよく滑れたっ！」と、ウキウキで練習を終われた日は一度もないんじゃないかな（笑）。特に引退を宣言していたソチオリンピック前の練習は本当に苦しかった。

　じゃあそれでもなんで続いたかといえば、最高の演技をお客さんの前で披露できた瞬間の、達成感の共有というか、会場と一体になったあの一瞬で、苦しかったすべてが「やってきてよかった」に変わっちゃうんです。

――苦しみの先に絶対的な喜びがあるんですね。

鈴木　赤ちゃんを産む過程と似てるんじゃないかといつも思ってて。出産経験はないですが喜びや幸せがあると信じられるからこそ、長い苦しみ・痛みがあっても頑張れるのかなって（笑）。

――だとすると、引退のタイミングを決めるのも難しかったのではないでしょうか。

鈴木　引退を決めることは本当にずっと怖かったんです。ただ、プロスケーターとして今後も活動を続けていきたいと思った時、競技者としては引退だけど、自分の人生はここから続いていくんだ、と切り替わっていったんですね。

――具体的にはたとえばどういったことでしょうか。

鈴木　プロとしてアイスショーで滑るときに、「オリンピック出場」というキャリアは大きいです。そして、「1回出場」より「2回連続出場」の方がよりインパクトは強くなりますよね。

　そういったかたちで、引退までの1年間を自分のセカンドキャリアにつなげていく1年だと捉え直すことができたら、未来はまだまだ明るいと思えたんです。

――引退を宣言して臨んだソチオリンピックは、鈴木さんの中で次のキャリアへの架け橋としての役割もあったんですね。当時、その結果をどのように受け止めましたか。

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